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海外FAの平野佳寿、決断の裏側は?
大切なのは「自分の体を知ること」。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2017/12/13 07:00
四球が少なく、三振が多いという平野佳寿の特徴もメジャーの高評価につながっている。
メジャーへの興味は、ずっと前から持っていた。
平野は今年3月に行われたWBCに出場した。初出場ながら、多くの選手が苦労するボールやマウンドに対応。6試合に登板し、初戦こそ失点したものの、その後は5試合連続無失点と抜群の安定感でチームを支えた。
ただ、それがメジャー行きのきっかけだったわけではないと言う。
メジャーへの興味は以前から持っていた。3年前の2014年には声をかけられたチームもあったが、その年国内FA権を取得していた平野は、オリックスと3年契約を結んだ。翌年には海外FA権を取得できる見込みだったが、その時は日本に留まることを選んだ。
「オリックスにすごく高い評価をしていただいて、必要としてもらったので。それに日本である程度投げられても、『向こうでちゃんとできるんかな?』という疑問がありました。シミュレーションみたいなことをする間もなく(メジャーから)話が来たので、考える時間がなくて、『急いで行ってもなー』というのもありました。その時はまだ早かった。でもこの3年間で少しずつ『できるかな』という思いになっていきました」
ただその間、オリックスと3年契約をしているからといくつかの誘いを断ってきただけに、「もうないかな」と思っていたという。しかしWBCのあと複数球団が興味を示していると聞き、本気でメジャー挑戦を考えるようになった。
寂しがる岸田には「それずっとゆってはりますわ」。
「楽しみですよ。(メジャーで)見てみたい」と岸田は平野を温かく送り出す。しかし本音はこうだ。
「寂しいです。12年間、何するにもずっと一緒にいたからね。いざいなくなると、ぽっかり穴が空いたような……。それぐらいほんまに寂しいです」
平野は、「それずっとゆってはりますわ」と苦笑する。
「でも今年だって僕は上(一軍)にいて、岸田さんは下(二軍)で、同じような(離れた)状況でやってたんで、『関係ないわ』ってゆーときましたけど(笑)」
そんなやり取りからは先輩後輩の枠を超えた関係性がうかがえる。平野は岸田のことを「人間としてすごく大きい、いいお兄ちゃん」だと言う。