ドイツサッカーの裏の裏……って表だ!BACK NUMBER

もうビデオ判定の導入は止まらない。
ブンデスで試行錯誤中。日本の運用は? 

text by

遠藤孝輔

遠藤孝輔Kosuke Endo

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2017/11/14 17:00

もうビデオ判定の導入は止まらない。ブンデスで試行錯誤中。日本の運用は?<Number Web> photograph by Getty Images

野球などと比べても、サッカーはプレーが止まる時間が短い競技だっただけに違和感は大きい。スムーズな導入に向けて課題は山積だ。

「明らかな誤審が生じた場合のみ」とはいうものの。

 Jリーグでも来季からVARを試験実施するとの話が出ているが、すんなりと定着させるには数多くの問題を解決せねばならないだろう。

 まずは「基準」をオープンにしなければならない。ドイツでVARのプロジェクトを推進していた元審判員のヘルムート・クルーク氏は当初「明らかな誤審が生じた場合のみに用いる」と公にしていた。

 ただし、あらゆる判定に適用するのではなく、「ゴールに関わるオフサイド、ファウル、ハンド、その他の違反行為。退場およびPK判定の正否。警告や退場の対象となっている選手の取り違え」という条件付きで、ケルン放送センターでチェックしているビデオ審判が無線機器を利用して主審に指摘するという仕組みだった。ちなみに、Jリーグでは主審と通信を行わないオフラインでの運用が検討されているという。

主審も映像を見る方がいいか、見ない方がいいか。

 問題視されたのは“明らかな”誤審という部分だ。現実には、微妙な場合、つまり審判次第でファウルにもノーファウルにも転びそうなプレーにもビデオ審判が物言いをつけるケースが少なくない。

 ビデオ審判による過剰反応を勘繰りたくなったのは筆者だけではないはずだ。例を挙げるなら、第8節のシュツットガルト対ケルンで試合終了間際に起きたシーン。ケルンのFWセルー・ギラシーが相手ペナルティーエリア内で転倒する。主審はPK判定を下した。しかし、ビデオ審判の介入で取り消しになったのだ。シュツットガルトのDFデニス・アオゴとの接触があったのは事実で、明らかな誤審と言えるプレーではなかった。

 ビデオ審判から指摘を受けて、主審もリプレー映像を検証する場合は当然ながら、試合中断の時間が数十秒では済まなくなる。第10節のヴォルフスブルク戦で、VARによるPK判定を下されたシャルケのDFナウドは言う。

「正しいかどうかを言うのは難しい。ただ、判定が下されるまでが長すぎるよ。その間、僕らはピッチで何もできないわけだからね」

【次ページ】 「サッカーが壊れる」という批判は増す一方。

BACK 1 2 3 4 NEXT
ヘルムート・クルーク
ルッツ・ミヒャエル・フレーリヒ

海外サッカーの前後の記事

ページトップ