JリーグPRESSBACK NUMBER
セレッソでルヴァン杯制した尹晶煥。
“らしくない”異能の韓国人監督の実像。
text by

吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/11/07 17:00

ルヴァンカップ優勝の瞬間、喜びを爆発させた尹晶煥監督。伝統あるチームの長い歴史年表に、輝く文字を刻むこととなった。
杉本、柿谷、清武らを使って攻撃サッカーをすれば!?
ちょっと良さが分かりにくいところもある。尹晶煥とそのチームの印象の根底には、長いスパンで見る尹晶煥自身の変化がある。今年4月に「Number」926号で尹晶煥の人物ノンフィクションを書いた。4日の決勝戦では、その時のテーマと同じ印象を抱いた。
やっぱり“らしさ”あるいは“スタイル”という印象がついて回る人だ。
決勝戦は韓国人監督のチームらしく、ハードに戦った結果とも取れる。実際、開幕前のキャンプ時には1日3度の猛練習でも知られた。
ADVERTISEMENT
とはいえ、杉本健勇、柿谷曜一朗、清武弘嗣ら豪華な攻撃陣を揃えるチーム。もっと“らしく”攻撃に比重を置いてもいいのではないか。
何より現役時代とキャラクターが違う。“韓国らしくない”と言われたテクニシャンタイプのMF、ゲームメーカーだった。本人は子供の頃、「プレーが日本っぽい」とよく言われたという。
あのファンタジスタが、なぜあんなハードなサッカーを?
あるクラブOBは2000年から'02年にともにセレッソでプレーした当時をこう振り返った。
「明らかに他の韓国選手(コ・ジョンウン、ノ・ジョンユン、ファン・ソンホンら)とは違いましたよ。他の選手達は居残りでバリバリ筋トレをやるような感じだったけど、ユンちゃんは『じゃあねー』と帰る。ピッチ外でも韓国人選手同士は厳しい上下関係でつながっていたけど、ユンちゃんは大久保嘉人あたりをつれて、さらっとご飯に行くようなところがあった」
確かに今でもピッチ外では非常に柔和な表情を見せる。日本語で楽しそうに関係者と談笑する姿を幾度も目にした。筆者自身、韓国のレジェンドプレーヤーを多く取材してきたが、韓国語で取材することを一番面白がってくれるのも彼だ。
なのに、なぜ、決勝ではあんなにハードなサッカーを? あのサッカーはかつての華麗なファンタジスタが構築したものだったのだ。