Number ExBACK NUMBER
中田英寿がつなぐアスリートの輪。
「HEROs」は日本をどう変えるのか。
text by
生島洋介Yosuke Ikushima
photograph byHEROs Project
posted2017/10/31 15:00
アスリートにとって、スポーツの力を世界にどれだけ波及できるかは宿願の1つ。HEROsがその契機となるかもしれない。
スポーツには勝ち負け以上の価値がある。
活動を先導するアンバサダーには、錚々たるメンバーが揃った。もはやレジェンドと言っていいサッカーの中田や柔道の井上康生、野球の松井秀喜、卓球の松下浩二。また現役のトップアスリートであるモータースポーツの佐藤琢磨、ボクシングの村田諒太、バスケットボールの田臥勇太。さらには上原大祐(パラアイスホッケー)、根木慎志(車いすバスケットボール)らパラリンピアンたち……。いずれも選手として華々しい実績を残しているだけでなく、独自の社会貢献活動を行ってきた人物である。やはり、“スポーツが持つ力”への思いは熱い。
2000年シドニー五輪の柔道100kg級金メダリストは、現役時代から子ども向けの柔道教室を開き、2010年には山下泰裕とイスラエルとパレスチナで合同柔道教室を行った。「スポーツの価値はただ勝つこと、勝負することにあるのではなく、もっと大きな力があると思っています。それは人と人、国と国をつなげる力。柔道だけでなくスポーツ界全体で、個々でなく総合力で、スポーツの素晴らしさを伝えていきたい」と話す。
またサッカーから「助け合うこと」を学んだという川澄奈穂美は、「(現在プレーする)アメリカでは社会貢献活動をするのがアスリートとして当たり前。向こうで感じたことを日本にいい形にして恩返ししたい」と語っている。
中田「他の競技の選手に会うことで影響を受ける」
こうした考えを持つスポーツ選手が、競技の垣根を超えてつながる。実はそのこと自体にも、大きな意味があるのではないか。中田はこうも語った。
「もっと根本に思いがありました。自分の現役時代には他の競技の選手に会う機会がなかった。当然サッカー選手からも影響を受けますが、それ以上に他のスポーツの選手に会うことで、もっといろいろ影響を受けられたんじゃないか。それによってもっといろんなことができたんじゃないかなと思うんです」
これまで接点のなかったトップアスリートが相互に影響を及ぼしあう。そんな環境ができれば、社会貢献活動の枠に留まらない新たな価値が生まれても不思議はない。
プロジェクトの社会発信第一弾は12月11日開催の「第1回 HEROs AWARD」。社会とつながるスポーツマンシップを発揮したアスリートを表彰するこの試みは、日本のスポーツ界、さらには日本社会にいったいどのような影響を与えていくのだろうか。
なお『Sports Graphic Number』はこうした「HEROs」の趣旨に賛同し、オフィシャルメディアパートナーとして活動をサポートしていく。