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隈研吾が語る新国立のビジョン。
「大地と森に溶けこむように」
posted2017/11/01 16:00
text by
生島洋介Yosuke Ikushima
photograph by
Yuki Suenaga
垂直ではなく水平な、コンクリートではなく木材を取り入れた建築になる。10月12日、「Number Sports Business College(NSBC)」第13回のゲスト講師に招かれた隈研吾氏は、自らが設計に参画した新国立競技場の姿をこう語った。
「小学4年生のときに国立代々木競技場を見て、打ちのめされました。(設計した)丹下健三さんはコンクリートと鉄を使って、当時の世界最先端の技術をみせようとした。対して私は、その1964年と2020年はどう違うかということを示そうと思っています。大地から天に向かって上昇していくような建築ではなくて、地面にそって水平に伸びていくような建築を目指しているのです」
小学生だった隈氏は、建築好きの父親に連れられて各地の建物を見に行ったという。前川國男の東京文化会館や黒川紀章のこどもの国(セントラルロッジ)。なかでも衝撃を受けたのが丹下の代々木競技場だった。まだ高い建物がなかった東京のフラットな土地に、突然巨大な建物が現れる。大地と天をつなぐような垂直線、アクロバティックな吊り構造、天国を思わせるプールの光などなど、建物のあらゆる部分に惹かれた。
代々木競技場は、ちゃんとあの時代を体現している。
その国立代々木競技場は、なぜ半世紀以上経ったいまなお強烈な存在感を保っているのか。隈氏が考える理由はこうだ。
「あの時代をちゃんと体現しているからだと思っています。コンクリートの工法が日本に入り始めて、首都高や新幹線ができた時代。丹下さんはやはり時代精神を拾い上げる才能があった。そういう建物だから、後から見返しても1964年はいい時代だったなと感じることができるのだと思います」
ここで司会の池田純氏が経験に照らして質問。横浜スタジアムでは、ゆかりのあるベーブ・ルースの像を立てたり、街の景観を取りこんだり、市民と心の距離を縮められるようなアイデアがあったがなかなか実現できなかった。日本人の苦手なエンターテイメント的な部分について、建築家である隈氏はどこまでかかわるのだろうか。