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短期決戦と剛腕の用心棒。
ダルビッシュ&マエケン世界一へ。 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2017/10/26 11:30

短期決戦と剛腕の用心棒。ダルビッシュ&マエケン世界一へ。<Number Web> photograph by Getty Images

優勝するための戦力としてドジャースに加わったダルビッシュ。ワールドシリーズこそが、真価を問われる場所なのだ。

アストロズ救援陣の防御率は散々な状態。

 とくにALCSの第4戦、7回表まで4-0とリードを奪いながら、救援のマウンドに立ったクリス・デヴィンスキー、ジョー・マスグローヴ、ケン・ジャイルズがヤンキース打線につかまり、4つアウトを取る間に5点を失った惨状には眼を覆うほかなかった。実際、ポストシーズンの防御率を見ると、デヴィンスキーが12.00、マスグローヴが10.13、ブラッド・ピーコックが9.00、フランシスコ・リリアーノが5.40、ウィル・ハリスが4.50、そして抑えのジャイルズが7.50。笊で水をすくうといっても大げさではない数字だ。

 これでよくア・リーグを制覇できたものだが、ALCSの最終戦、ロングリリーフで踏ん張ったのがランス・マッカラーズJr.だった。4イニングスを1安打ゼロ封。あの試合で彼が見せた「カーヴ24連投」は、のちのち語り草になるのではないか。もちろん、功労者はほかにもいる。ヴァーランダーとダラス・カイケルの先発二枚看板は期待どおり強力だし、ホゼ・アルトゥーベ、カルロス・コレア、ユーリ・グリエルを軸とする打線の破壊力は相変わらず抜群だ。

 もっとも、主軸の全員が打ちまくっているわけではない。ジョージ・スプリンガー、ジョシュ・レディック、マーウィン・ゴンザレスは、レギュラーシーズンに比べればバットが湿っているし、アレックス・ブレグマンやブライアン・マッキャンも本調子ではない。

ブルペンにまわったマエケンの活躍も大きい。

 一方、ドジャースの強みは日替わりでヒーローが出てくることだ。ローガン・フォーサイスやオースティン・バーンズの活躍については前にも述べたが、彼ら脇役と並んで、主力のジャスティン・ターナーやクリス・テイラーはシリーズMVPに輝くほど当たっているし、NLCS後半ではエンリケ・ヘルナンデスやチャーリー・カルバーソンといった伏兵も出現してきた。

 もうひとつ、ドジャースの優位を示す指標は、ブルペンの好調がつづいていることだ。レギュラーシーズン終盤の9月、セットアップのペドロ・バエスが不調に陥ったときにはしばし暗雲が立ち込めたが、ここはなんといっても、先発からブルペンにまわった前田健太の活躍が大きい。ポストシーズンでは5試合5イニングスを無安打無四球に抑え、奪三振が7。彼の快投に刺激されて、ブランドン・モロー、トニー・シングラーニ、ジョシュ・フィールズ、そして抑えのケンリー・ジャンセンらもほぼ完璧なつなぎを見せている。

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