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短期決戦と剛腕の用心棒。
ダルビッシュ&マエケン世界一へ。
posted2017/10/26 11:30
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
アストロズがア・リーグを制覇した。ニューヨークでヤンキースに3連敗したときはどうなることかと思ったが、最後は地力で押し返した。若手主体のヤンキースは善戦だった。田中将大につづく先発投手がもう一枚いたら大穴をあけるところだったが、これは来季以降の楽しみにとっておこう。
というわけで、ワールドシリーズはドジャースとアストロズの対決になった。順当といえば順当な組み合わせで、「今季最強の用心棒」ダルビッシュ有とジャスティン・ヴァーランダーの働きに注目が集まることは必至だ。
とはいうものの、勝敗の行方がよほどもつれないかぎり、両者の直接対決は見られそうもない。アストロズはヴァーランダーの第2戦先発を、ドジャースはダルビッシュの第3戦先発を発表した。ダルビッシュはヒューストン(ミニッツメイド・パーク)のマウンドと相性がよい。
ドジャースには大きな弱点が目立たない。
最も記憶に鮮明なのは、レンジャーズ時代の2013年4月2日(開幕第2戦)、9回二死から初安打を許し、完全試合を逃した試合だろう。当時極端に弱かったアストロズ相手とはいえ、ダルビッシュはこの試合で14三振を奪う快投を見せた。
同じ年の8月12日にも、8回を1安打、1失点、15三振に抑えている。今季は6月12日に7回1安打1失点で勝ち投手になった。通算では、6度先発して4勝1敗。メンバーの入れ替わりがあるとはいえ、実質4シーズンにわたって同地区で戦ってきた相手だけに、手の内は知り尽くしているはずだ。第1戦と第5戦に彼を先発させるという選択肢もあったはずだが、デイヴ・ロバーツ監督は、順調に勝ち進んできたポストシーズンのリズムを崩したくなかったのだろう。
さてこの対決、下馬評では「投手力のドジャース」対「打力のアストロズ」という声が高い。データからいえば当然そうだが、あっという間にモメンタムが変わり、勝敗の行方が意外な方向に流れていくのも短期決戦の常だ。ただ、ポストシーズンの戦い方を見ると、ドジャースに大きな弱点が目立たない一方、アストロズはブルペンが何度も崩れている。