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「言われた時は嫌でしたけど……」
西武の主将・浅村栄斗、変身の1年。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2017/10/23 07:00
2013年以来の出場となったクライマックスシリーズ。4年前とは違う立場でチームをけん引した。
「やっぱり負けたときは責任を感じましたね」
開幕直後はコンスタントにヒットを記録し、6月まで3割以上の打率をマーク。しかし、その後は蓄積疲労からバットの振りが鈍くなる時期もあり、チャンスで凡退するシーンも増えた。
勝てない時期には左胸についている“C”のキャプテンマークが重く感じた。
「やっぱり活躍できなかったとき、負けたときは責任を感じましたね。自分がここで打てば勝てたのに……という試合がいくつもあったので……」
しかし、闘志が消えたわけではなかった。
8月6日、メットライフドームで行われたソフトバンクホークス戦では5回、1アウト一、三塁からピッチャーゴロを打ち、一塁へのヘッドスライディングで併殺を阻止。三塁走者が生還して貴重な決勝点となった。浅村の鬼気迫るヘッドスライディングが勝利を呼び込んだ。
「最初は正直、大丈夫かなぁ」と思われていたが。
大阪桐蔭高校時代の1学年上で、今シーズン、常時一軍で浅村の姿を見ていたキャッチャーの岡田雅利は言う。
「アサ(浅村)がキャプテンと最初に聞いたときは正直、大丈夫かなぁって思いましたよ。口であれこれと言うタイプやない。高校時代も、おとなしくてどこにいるのかわからないような子やった。でも、変わりましたよね。あのヘッドスライディングも、僕の知る限り、アサはああいうプレーをする選手ではなかったですからね。
それが普段の試合から『若い選手がやっていかないと』とか『僕らがやらんと』という言葉をよく言うようになった。プロで一緒に4年、やってきましたけど、今年は年上の選手に対しても進んでコミュニケーションを取ろうとしている。キャプテンとしてがんばっているんだなって思いながら見ていました」
“チーム”と一口に言っても、ひとつの球団には総勢70名が在籍し、28名の選手が一軍に登録されている。ルーキーからベテランまで年齢もばらばらだ。
一軍でチャンスをつかもうと必死に毎日を過ごす若手や、その好不調がチームの勝敗を左右する主力選手。出番は少ないものの、ここぞという1打席のために黙々と準備を続けるバイプレーヤーまで、さまざまな立場で野球と向き合い、さまざまなモチベーションを持つ選手の集まりである。そんな選手たちが同じ方向を向いて143試合を戦えるよう、キャプテンは先頭に立ってチームを率いなければならない。