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「言われた時は嫌でしたけど……」
西武の主将・浅村栄斗、変身の1年。
posted2017/10/23 07:00
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
Kyodo News
「悔いだけは残したくなかったですから」
クライマックスシリーズ・ファーストステージ、第3戦。1-5とリードを許した9回裏、浅村栄斗が放った打球は、最後まで声をからせて応援を続けていたライオンズファンが待つレフトスタンドに突き刺さる。
1年間、チームをけん引したキャプテンが見せた意地の一発だった。
レギュラーシーズンを2位で終えたライオンズは、2008年以来となる日本シリーズ進出を目指し、クライマックスシリーズに挑んだが、あと一歩、力及ばず。1勝2敗という成績でポストシーズンを終了した。
「もっとやれたという思いが大きいです。もちろん、キャプテンとしてもそうだし、選手としても、全然納得していないんで……。今シーズンは内容が濃い、今までに経験したことがないくらい濃い1年でした」
観客が帰途につき、静けさを取り戻した球場の隣にある駐車場に姿を現した浅村は、落ち着いた口調で2017年シーズンをこう振り返った。
秋山さんとかいるのに、なんで僕が?
プロ入り9年目。19歳から一軍出場を続けてきた浅村が、自身、初めてとなるキャプテンに指名されたのは昨年秋のキャンプのときだった。新しく就任した辻発彦監督から「プレーやその背中でチームを引っ張ってほしい」とキャプテンマークを託された。
「言われたときは、嫌でしたね。嫌って言うと言葉が悪いですけど、秋山(翔吾)さんとか、ライオンズには僕よりもキャプテンにふさわしい人がいる。『なんで僕が?』と思いました。でも、いろいろと考えているうちに、せっかく指名してもらえたし、やるからには責任感を持ってやりたいと思えるようになったんです」
すぐには覚悟が決まらなかった。それでも、開幕が近づくにつれて「やらなければ」と徐々に責任感も芽生えていった。
「でもシーズン中は、キャプテンというより、まずは1人の選手としてプレーで、結果で示していきたいという気持ちのほうが大きかったです」