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2年間は「ちょっと短かったかな」。
掛布二軍監督が滲ませた意地と核心。
text by
渡辺勘郎Kanrou Watanabe
photograph byKyodo News
posted2017/10/07 09:00
「31」の最終戦を観るため、開門前の甲子園球場には約1400人のファンが列を作り、その中には徹夜組もいた。
どの選手よりも大きな拍手と歓声を浴びた監督。
そして、いざ試合が始まると阪神の先発は、調整中とはいえCSでの活躍が期待される藤浪晋太郎投手。しかも、5回1失点の好投。おまけに、序盤からカープのエラーも絡んでタイガースが大量リード……虎党には何とも嬉しい展開だったが、それでもスタンドが一番盛り上がったのは掛布監督が選手交代を告げるためにベンチを出てきたときだった。
現役には申し訳ないが、どの選手より大きな拍手と歓声が起きていた。
試合は16-4という大差で阪神の勝利。31番は有終の美を飾ったように思えたが、このあと、しばらくしてから観客は、不思議な光景を目にすることになる。31番は、選手たちがやろうとしていた胴上げを拒否したのだ。
「胴上げは勝者がするもの。僕は、される身ではないと、最初から決めてました」
スタンドのファン向けにマウンド付近で行われたインタビューも、親交のあるベテラン記者に言わせれば「らしさ全開」。
「ちょっと優しい監督だったかもしれません」
まず、進行役に第一声を求められた31番が「(2年間は)ちょっと短かったかな」と、余りにも率直な言葉を発したときは、居合わせたファンも報道陣も、そんなこと言うてエエんかいな? と面食らった。
「選手たちは確実に力を付けてきてくれてると思いますし、そういう意味では非常に濃い2年間だったと思います」
畳みかけるように語る31番の言葉を聞いていると、やってきたことに間違いはない、という自信が感じられ、なぜ辞めるのか一層分からなくなった。
そして31番は、より核心を突く言葉を口にする。
「……あまり上から選手を見ていてはいけない、選手と同じ目線でいないといけない、と思っていたので、ちょっと優しい監督だったかもしれません」