濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
大成功のK-1さいたま大会に見た
「最後は気持ち」の説得力。
posted2017/09/23 09:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Takao Masaki
これまで、本当にたくさんの格闘家から「気持ち」について聞いてきた。
「気持ちでは誰にも負けない」、「最後は気持ちの勝負になる」、あるいは「勝因はベルトに対する気持ちの差」。
彼らが技術やフィジカルをないがしろにしているわけではない。ライターとしては安易な精神論を書きたいわけではないし、技術に個性が宿ることも充分に知っているつもりだ。
ただ相手を倒すための作戦を立てるのも、技術を身につけるための数え切れないほどの反復練習も、結局のところ「勝ちたい」という気持ちがさせるのだろう。
もうこれ以上はできないというくらい練習して、夜も眠れないくらい対戦相手のことを考えて、でもそれはみんなやっていることだと選手たちは知っている。
だから「最後は気持ち」と目に見えない力で差をつけようとするのだ。
久保優太が“復活”できた理由とは?
9月18日の「K-1 WORLD GP 2017 JAPAN ~初代ウェルター級王座決定トーナメント~」(さいたまスーパーアリーナ・コミュニティアリーナ)は、まさに「気持ち」でしか説明がつかない試合が多かった。
超満員札止め、8000人の観客を熱狂させたのは気持ちのぶつかり合いだったと言ってしまっていいだろう。
初代ウェルター級(-67.5kg)王座決定トーナメントで優勝したのは、久保優太だった。
過去にKrushやGLORYのトーナメントで優勝している久保だが「この10戦は勝ったり負けたりで、新生K-1ではまったく活躍できてなかった。もう終わったと言われて、自分でも自信をなくしてました」と言う。
そんな久保が“復活”できた要因の1つは、全盛期に指導を受けていた矢口哲雄トレーナーとの練習を再開したこと。
現在はK-1ジム五反田の代表を務める久保だが、このトーナメント開催が決まると「僕をもう一回、世界一にしてください」と矢口に頭を下げたという。