濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
大成功のK-1さいたま大会に見た
「最後は気持ち」の説得力。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2017/09/23 09:00
「今回がラストチャンスのつもりで、負けたら引退しようと思ってました」と試合後にコメントした久保。その覚悟が、再びの栄冠をもたらしたと言える。
「人の夢を踏み台にしたわけですから」
モハン・ドラゴンとの決勝戦、苦しい場面でも前に出てダウンを奪い、判定勝ちすることができたのは、もうすぐ30歳になる久保が「久しぶりに筋肉痛で眠れないくらいの練習をしてきたから」だそうだ。「それで、試合中きつい時も歯を食いしばってやれたんです」。
もう1つ、1回戦で木村“フィリップ”ミノルと闘ったことも大きかった。久保と木村は元同門。山梨にいた木村を東京に出てくるよう誘ったのが久保で、弟のように可愛がってきた。今回の対戦オファーも一度は断ったし、勝ったとはいえ「闘いながら躊躇してしまう部分はありました」。
それでも、勝ったことで「責任を感じた」と久保は語っている。「人の夢を踏み台にしたわけですから」。弟のような存在を殴って勝ち上がった準決勝、決勝では「昔の貪欲な、ギラギラした久保優太に戻ることができました」。
“振り回し屋”モハンの切れなかったスタミナ。
日本在住のネパール人、40歳のモハン・ドラゴンが決勝進出を果たすことができたのも、「気持ち」のおかげだ。
ほぼすべてのパンチを、自分がバランスを崩すほどの全力で打ち込む“倒し屋”にして“振り回し屋”タイプ。勝利は常に豪快KOだが、相手のテクニックに翻弄されることも多い。スタミナ切れをおこすのも、モハンの試合ではおなじみの光景だ。
だが、この日はパンチが相手に見切られなかった。3試合やっても最後までスタミナが切れなかった。
久保曰く「思った以上にパンチが伸びてきた」。以前、モハンに勝っているのに今回は準決勝でリベンジを許してしまった山際和希は「今日のモハン選手はノッてましたね。前回と違った」と言う。
モハンは決勝で敗れたものの大健闘、宮田充プロデューサーが「大会のMVPだったと思います」と言うほどのインパクトを残した。