「今回は“キャラクター重視”として見せよう」

　両者のファンなら見逃せない番組である一方、情熱大陸の視聴者層はスポーツファンだけではない。例えば大迫の場合は、福岡の言葉を借りると「W杯予選が佳境を迎える、というのを世の中が認知しているタイミング」を見て特集を組んだが、サッカーの部分にこだわらないというのがこの番組の特徴でもある。

　福岡はこう続ける。

「サッカー界での人気のストライカーというよりも、本当はどんな人なのかっていうのを“キャラクター重視”として見せる方が面白いなと思って、そういう編集にしているんですよね」

　正直に書いてしまうと、普段からスポーツを取材する筆者にとって“キャラクター重視”という表現に、一瞬違和感を持った。ただその言葉には、アスリートとしてだけではなく、生身の人間そのものを撮るという意味が込められている。実際、試合中には見たことがない表情をカメラに向けて見せるシーンがちりばめられていた。

取材対象との関係性は「4段階くらいあって……」

　そういった表情を撮る上で肝となるのは、取材対象との距離感だ。これについて福岡は“4段階”に分けてこう説明してくれた。

「人間の関係性って4段階くらいあって、1段階目はいわゆる“仲良しクラブ”だと思うんですよ。でもそれって表面的じゃないですか。番組制作でも、その状況のまま人間性が進んで、取材対象の内面を深堀りしきれずに番組ができあがってしまうことがあります。

　2段階目はその“仲良しクラブ”を超えて、腹を割った話ができるようになったところだと思っているんですよ。制作陣が『僕はこう思っていますけど、あなたはどう思っているんですか？』みたいな距離感の中で、少しくらいコンフリクトが起きた方が番組としてはいいものになるはずなんです。そこを克服していくことで“じゃあ俺たち、こうやって撮っていこうよ”と発展して3段階目に進み、最終的にはお互いが気持ちよく思いを感じ合える関係性になる。これが4段階目だと思うんですね」

【次ページ】　「あなたのことを、気にしていますよ」の距離感。