スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
バルサのカンテラで学ばなかった男。
自己中デウロフェウ、覚醒なるか。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2017/09/15 11:00
連係プレーは心もとないかもしれない。ただ左サイドの前任者最大の武器はドリブルだった。デウロフェウもそう開き直ればいい。
監督の言うことを聞かず、学んでこなかった代償。
ここまでボロクソに書いてきたが、大化けするポテンシャルは持っている選手である。
9歳でバルサに加入して以降、デウロはどの世代でも突出した存在であり続けてきた。トップチームデビューは17歳。同年にはほどなくバルサBの主力となり、2年目の2012-2013シーズンには18ゴールを挙げて2部の最優秀選手に選ばれた。
だが突出した存在であるがゆえに調子に乗り、監督の言うことを聞かず、10代のうちに学ぶべきことを学んでこなかった代償は大きかった。
トップチーム契約を結んだ2013-14シーズンはレンタル先のエバートンでそれなりに活躍した。だがいよいよトップチームでの挑戦が期待された翌年は、プレシーズンの時点でルイス・エンリケに早々に見限られてしまう。
レンタル先のセビージャでも空気の読めないワンマンプレーと守備意識の低さを理由にウナイ・エメリに干され、翌年にはエバートンへ完全移籍。この時点でバルサ的には過去の人となったはずだった。
ミランへのレンタル移籍で評価を高めた、が……。
そんなデウロが一転して復帰のチャンスを得ることになったのは、今年1月のミランへのレンタル移籍がきっかけだった。迷走極めるイタリアの名門クラブで持ち前の突破力を披露すると、3月にはU-21代表の恩師であるフレン・ロペテギに呼ばれてフル代表でプレーする機会も得た。
そうやって国内外で評価を高めたことがバルサへの復帰につながり、さらにネイマールの移籍と補強の失敗が重なったことでプレー機会も大幅に増した。開幕から3戦連続で先発することなど、復帰が決まった時点では誰も想像していなかったことだ。
しかし、ここまで先発にふさわしいパフォーマンスを見せてきたかと言うとそうでもない。
以前と比べれば守備意識は高くなった。球離れも良くなっている。ただバルサっぽくシンプルにプレーしようという意識が強すぎるあまり、持ち味である思い切りの良いドリブル突破を仕掛ける姿勢が薄れてしまっては本末転倒である。