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韓国のしらけた9大会連続W杯決定。
最終予選の歩み、日本との違いって?
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byAFLO
posted2017/09/08 12:30
イラン対シリアの結果を受けて本大会出場が決まった韓国。選手たちは歓喜を爆発させるというより、安堵の表情を浮かべていた。
2大会連続、しらけムードでの出場権獲得。
今回の事の重大さはこの点にある。
2大会連続で、しらけムードのなか本大会出場が決まったのだ。
前回ブラジルW杯予選時もそうだった。2013年月6月18日の最終節イラン戦(ホーム)では0-1の敗北。ウズベキスタンとの得失点差でギリギリの本大会出場を決めたのだった。筆者は当時、試合会場だった蔚山ワールドカップスタジアムにいたが、試合後の出場決定セレモニーではスタンドからサーっと人が引いた光景を目にした。
このダメージ、実は大きい。予選は結果がすべてだが空気感は無視できない。
韓国は近年“アジアでは一定の地位にある”が“W杯では早期敗退”という位置にある。これは日本と同じだと言っていい。すると4年間の盛り上がりどころは、本大会出場決定、アジアカップ、そのアジアカップ制覇で出場権を得られるコンフェデレーションズカップ、という3つが主となる。
日本はザッケローニ監督時代にW杯でグループリーグ敗退を喫したものの、アジアカップ優勝、コンフェデでの熱戦で二度“ヤマ場”をつくった。
しかし韓国は2010年以降、これを得られていない。そもそもアジアカップでは半世紀以上優勝から遠ざかっているのだ。加えて、W杯予選突破も2大会連続で渋いゲームにより決まった。要は「いったいどこで盛り上がればいいの?」という状態だ。
「もし出られなければ投資が野球代表に流れる」
このフラストレーションに対し、冒頭で挙げたマイナス情報がまとわりついた。そう理解していい。本来、表現がスポーツ紙よりマイルドであるはずの一般紙「東亜日報」ですらウズベキスタン戦直後にこんな見出しの記事を掲載した。
「見るべきもののないシン・テヨンサッカー 祝杯よりも反省を先に」
一方で予選敗退の恐怖感は今回、日本も経験したところだろう。ちょうど1年前、UAEにホームで敗れるなど苦しんだ最終予選序盤には、居酒屋などのサッカートークでこんな話になったのではないか。
“いっそのこと、一度くらい予選敗退して、サッカー界がやり直せばいいんじゃない?”
韓国でもそういった声があったようで、ご丁寧に国内のサッカー系メディアは予選敗退したと仮定した“近未来小説”を書き、「絶対に本大会に出るべき」と反論している。
「当座では大きな問題はない。しかし、2020年の大韓サッカー協会のスポンサー契約更新時に大打撃を実感する。W杯に出ないことによるPR効果のマイナスがここで反映されるからだ。スポーツに投資しようとする国内企業の資金は、東京五輪に出場する野球代表に流れる」
なんとも壮絶だ。韓国と比較した際、日本の現状についてはこう言ってもいいだろう。
「予選突破。喜べる時には目一杯喜んでおこう」