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あのブレイディ来日でも騒がれない。
日本でのアメフト認知に必要なこと。
text by
別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu
photograph byAFLO
posted2017/08/14 08:00
NFL史に残るQB、トム・ブレイディ。彼が来日したというスポーツニュースは、もっと大きな価値を持ってよかった。
高いパフォーマンスを出し続けるのが本当に難しい。
「NFLのキャンプに行って感じたんですが、例えばサマーキャンプだと1カ月ちょっとトレーニング期間が続いて、その前にはチームでの合同練習も数日間ある。そういう環境の中でずっとトレーニングに出続け、高いパフォーマンスを出し続けるのがめちゃくちゃ難しいんです。そこでいかに自分をアピールしていくかが重要になる。期間が長ければ長いほど“タフさ”が必要になってくるんですね。
アメリカでNFLに挑戦するような選手は、高校時代からプロのように扱われている。田舎の高校のエースだって、地元では大スター。プロ選手と同じようにサインを求められ、それを学生時代から経験しているわけで、アピールの仕方も含め、そこにおけるアメリカ人と日本人の感覚が違うんだと感じました」
彼らは絶対、1日に1回は“スーパープレー”をする。
実際のトレーニングキャンプでも、プレーの実力以上に魅せ方の違いを感じたという。
「僕はほとんどキャッチングのミスはしなかったんですよ。そこは非常に評価してもらいました。マンツーマンでも、一度も負けなかったと思います。そんなレシーバーは多分、僕しかいなかった。肉体面でも、何人かがケガで抜けていく中で、僕は我慢して出続けた。本当にすべてを出し切っていたんです。
でも、他の選手を見ていて思ったのが、彼らは絶対、1日に1回は“スーパープレー”をするんですよ。僕は全ての動きを堅実にミスなくやっていたとは思うんですが、いわゆる“スーパーキャッチ”みたいなものはできていなかったんです。ああいう時の魅せ方は感覚が違うのかなぁと強く思いましたね」
来日中にブレイディが行ったイベントでも、こんなことがあった。ゲストの小学生とボールを籠に入れるゲームでの対戦中のことだ。リードを許していたブレイディは最後の最後、勝負の一投を見事に籠に叩き込み、ファンの喝采をさらって行ったのだ。イベントの小さなゲームであっても小学生を差し置いて主役になってしまう。万人の目を奪うプレーをするという資質が刷り込まれているのだろう。