Jをめぐる冒険BACK NUMBER
浦和が陥った疑念と負のスパイラル。
ペトロヴィッチ監督解任と、今後。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/08/04 11:30
ペトロヴィッチ監督が作った土台の上に広島は黄金期を築き上げた。浦和の今後次第で、彼の功績はまだまだ大きくなる。
オートマチズム確立の一方で同じミスの繰り返しが。
チーム内に迷いが生じていることは、選手の言葉からも感じられた。「まずは無失点にこだわりたい。失点しなければ最悪でも勝点1は獲れるんだから」と語る選手もいれば、「失点をしないような戦いをすれば、うちの良さは出なくなる」と言う選手もいて、チーム内には異なる考え方が存在していた。
イージーなミスによる失点が続いた6月25日のサガン鳥栖戦のあとには、西川がこんなことを話していた。
「失点シーンに関してチームとしてのミーティングはないので、そこは選手同士でしっかりと話し合って修正していかなくてはいけない」
どうやらそこには、失点に目を向けるより、攻撃をさらに良くすることに主眼を置きたいとの指揮官の考えがあったようだ。だからこそ、あれだけ機能的なオートマチズムが確立されたが、一方で、それが同じミスを繰り返す原因だったかもしれない。
7月22日のセレッソ大阪戦のあと、柏木陽介が「一回ケンカをしようかなって思う。それぐらい厳しく言い合わないといけない」と嫌われ役を買って出ようとしていたが、それはすなわち、失点における責任の所在が曖昧になっていることを意味していた。
指揮官も大胆な策を講じたが、悪循環の中では悪手に。
ペトロヴィッチ監督ももちろん、好転しないチームを、ただ指をくわえて見つめていたわけではない。
7月5日の川崎フロンターレ戦では従来の3-4-2-1ではなく4-4-2を採用し、前述のC大阪戦では2シャドーに外国籍選手であるズラタンとラファエル・シルバを並べた。7月29日の北海道コンサドーレ札幌戦ではハーフタイムに3人同時交代という博打を打ったが、そのすべてが裏目に出てしまった。
ペトロヴィッチ監督が大胆な策を講じることは、過去にもあった。
例えば、FCソウル戦。ウイングバックの駒井善成をボランチで起用したが、これは見事に奏功している。チームが好転しているときはどんな策もうまくいき、悪循環に陥っているときは、打つ手がことごとくハマらない――。それは、勝負事にはつきものかもしれない。