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「正直、引退も考えたんです」「“勝てるわけない”と…」パリ五輪で日本勢“過去最高順位”なのに? ハードル女王・福部真子(29歳)が感じたリアル
posted2024/12/15 11:00
text by
加藤秀彬(朝日新聞)Hideaki Kato
photograph by
JMPA
取材エリアにやってきた福部真子(29歳)が、思わぬことを口にした。
9月23日の全日本実業団対抗選手権。女子100mハードルで優勝し、パリ五輪後の日々を振り返ってくれた。その中での一言だ。
「競技人生で初めて10日間何もできなくて……いつもなら『そろそろ体を動かさないと』とかすぐにわいてきたのに、それが全くなかった。本当に、引退もよぎりました」
福部はパリ五輪の予選を、日本選手の過去最高記録となる12秒85(-0.1)で通過した。
準決勝でも日本選手で過去最高成績の組5着。女子100mハードルで、歴代のどの日本選手より、高い景色を見たばかりだ。
来年の東京世界陸上や4年後のロサンゼルス五輪では、さらに高みをめざす。そう前を見据えているとばかり思っていた。
そこで飛び出した「引退」という予想外のワード。
シーズンを終えた福部に、改めてその真意を聞いた。
パリ五輪後の「引退」発言の真意は…?
「そもそも、『オリンピックに出られたらいいや』では出ていなかったので」
パリ五輪へ向けた日々を振り返ってくれた。
福部は、以前にも「引退」を考えていた時期があったという。
広島皆実高校時代、インターハイで3連覇した。当然のように日体大進学後も活躍が期待されたが、「日本一」のような輝かしい結果は残せなかった。実業団選手になって以降も、当時拠点だった関東でコーチと方向性がかみ合わず、長く不調に陥っていた。
2020年の冬、競技をやめようと思った。でも、その前に。最後の可能性として考えたのが、地元の広島で競技を続ける選択だった。
「負けても何も感じなくなった時期で……。そこから『もう1回』と頑張るには、ただの『もう1回』じゃダメだったんですよね。相当の覚悟を持ってやらないといけないし、それをやり続けるための高い目標が必要でした」