Jをめぐる冒険BACK NUMBER
浦和が陥った疑念と負のスパイラル。
ペトロヴィッチ監督解任と、今後。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/08/04 11:30
ペトロヴィッチ監督が作った土台の上に広島は黄金期を築き上げた。浦和の今後次第で、彼の功績はまだまだ大きくなる。
「ミシャに出会えなかったら今の自分はない」(柏木)
昨季はうまくいっていたのに、なぜ、こうなってしまうのか。1人ひとりに宿るその疑念が、負のスパイラルを加速させたこともあるだろう。
確固たるスタイルを持ち、迷ったときに立ち返る場所がある浦和でさえ、こうなるのだから、負のスパイラルとは恐ろしい。恐ろしいからこそ、断ち切るためには、解任という大鉈を振るわなければならなかったのだ。
5年半にわたった浦和とペトロヴィッチ監督の蜜月は、悲しい結末を迎えた。選手たちも一様に、動揺を隠せなかった。
「嗚咽するぐらい泣いた。ミシャに出会えなかったら今の自分はない。ここからチームが上に行くことが、ミシャへの恩返しになると思っている」と柏木が噛みしめるように想いを吐き出せば、槙野智章も「監督と通訳の(杉浦)大輔さんのために俺たちがやらなきゃ、ふたりが余計に悲しむ。この交代がチームにとってプラスに働くようにしなければ意味がないし、監督にも決断を下したクラブにも申し訳ない」と神妙に語った。
感傷に浸る暇などないことは、選手たちもよく分かっているはずだ。堀孝史新監督を迎えたチームにとってリスタートの場は、奇しくも潮目が大きく変わった大宮戦。流れをもう一度変えるのに、これほど相応しい舞台はないだろう。
さいたまダービーを制して再び、力強く前に進んでいくこと――それが、育ててくれた恩師への恩返しにもつながるはずだ。