松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹が本当に全英で優勝しそう。
歴代王者と通じるゴルフへの寛容さ。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2017/07/21 12:00
グランドスラムの初日は松山英樹にとって鬼門だった。ここからいつものように徐々に調子を上げる事ができれば最後は……。
傍から見れば「痛恨の一打」でも……。
ロイヤル・バークデールのほとんどのグリーンは、少ないところで2~3個、多いところで5~6個のバンカーでガードされており、7番以外はすべて、時計の4時から8時の範囲内に収まっている。それは、手前からボールを転がし上げるリンクスコースならではの攻め方を阻み、難度をアップさせるためのコースレイアウト上の工夫。いわば「リンクスの法則」だ。
だが松山はそんなリンクスの法則を逆利用する形で、バンカーを活かし、バンカーから寄せるべく開幕前からバンカーショットの練習を重ねてきた。
それなのに4番でも6番でもサンドセーブに失敗し、ボギーを喫したことは、悔しくなかったはずはない。
パーの連続となった10番から14番。紙一重でパットがカップに沈んでくれなかったときも、彼は唇をぎゅっと噛み締め、視線を遠くへやっていた。パー5の17番で外した1m半のバーディーパットは、傍から見れば「痛恨の一打」。
口には出さずとも、松山が胸の中でグッとこらえていた悔しさは、きっとたくさんあったはずだ。
「ストイック」と言われるが、この日はむしろ柔和。
松山英樹を語るとき、しばしば使われる修飾語といえば、「自分に厳しい」「ストイック」「完璧主義」。
だが、「良かったこと」と「悔しかったであろうこと」が混在し、「完璧」「大満足」とは言えない形で終わったこの日、彼が見せたリアクションはむしろ柔和で、良きも悪しきもそのまま受け入れ、中庸を良しとする姿勢だった。
「痛恨」となったであろう17番のバーディーパット。ラインは難しかったのか?
「うーん、難しくはないけど、外しましたね」
技術面、メンタル面、ゲームの組み立て方や運び方。気になるところはなかった? 改良や修正が必要と思えたところはなかった?
「それを言い始めたら、きりがないので。まあ、いいんじゃないですかね」
きりがないということは、言いかえれば、思うところがたくさんあるということ?
「それが今の状態なんで」