松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹が本当に全英で優勝しそう。
歴代王者と通じるゴルフへの寛容さ。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2017/07/21 12:00
グランドスラムの初日は松山英樹にとって鬼門だった。ここからいつものように徐々に調子を上げる事ができれば最後は……。
68で回り「まあ、良かったんじゃないですかね」。
前日の夕方から断続的に激しい雷雨に見舞われたロイヤル・バークデールの初日のコンディションは出だしから雲をつかむような状況だった。フェアウェイはどのぐらい転がるのか、転がらないのか。グリーンは湿って重いのか、それとも想像以上にドライアップして途中からスピードを増すのかどうか。
だが、松山は千変万化する難解なリンクスコースに、柔軟に対応しようと考え、実際、それがうまくできていた。
「グリーンのスピードは練習日とは違ったけど、気にしないでいけた」
6月の全米オープンでは最終的には2位になったが、初日の出遅れは最後まで響き、だからこそメジャーを制覇するための今後の課題は安定したゴルフを4日間維持することだと言っていた。
そんな中、2アンダー68で回った全英オープン初日は「まあ、良かったんじゃないですかね」。
松山は基本的に「悪かった」とは言わない。
こうして見ると、松山の初日は「良かったこと」がたくさんあった。
松山は「悔しい」、「残念」といったネガティブな感想をなかなか言葉にしないのが常。だが、誰がどこからどう見ても「悪い」と思える極端なケースのときだけは、ストレートに悔しさや怒りを表現する。
最近で言えば、6月の全米オープン初日は、松山が「最悪です」と言い放った珍しい例となった。
日頃から「悔しい」「悔やまれる」「悪い」と感じることは多々あるはずだが、そこを黙ってグッと飲み込むのが松山流だ。今日の初日を終えたときも、彼は「悔しい」「悪い」を一言も言わなかった。しかしそれは、彼が悔しさを一切感じていないことを示していたわけではもちろんない。