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卓球“世界最強の中国”に勝つには?
世界2位、森薗・大島ペアの過酷な道。
text by
武田鼎(Rallys編集部)Kanae Takeda
photograph byKei Ito
posted2017/07/22 07:00
森薗が得意とするチキータが、48年ぶりの快挙を生んだ。東京五輪までの残り3年。どこまで進化できるか?
「技術的な問題じゃない。何か“閃き”のような……」
まず森薗たちが始めたのは「負け」を直視することだ。すると試合のターニングポイントが見えてきた。
「最終第7ゲームじゃなくて6ゲーム目にあったんです。10-8でリードしていた。そこから大島さんのサーブだったので僕が3球目攻撃で2本攻めたかったんですけど、1本目逃げの一手でバックに流したら待たれて攻撃されちゃって。次の1本、違うことをすれば良かったんですけど、もう一回まったく同じことをしてしまった。あそこでストップして大島さんに攻めさせていれば……」
森薗たちが抱いたのは漠然とした感覚だった。
「技術的な問題じゃないんです。何か“閃き”みたいなものが足りなかった」
ペアの連携や個々のスキルの問題ではないと感じていた。ただ2人でこれだけは決めた。「世界選手権でつけられた傷は世界選手権で返そう」と。
技術を圧倒的に超えていく肉体を目指して……。
シングルスに求められるのは個の強さだが、ダブルスではそれに加えて選手同士の相性の良さが求められる。
森薗・大島ペアは日本代表の中でも「屈指の相性の良さ」と言われている。
シングルスでは世界ランク65位の森薗と、19位の大島なのだが、ペアを組んだ途端にそれ以上の輝きを放つようになるのだ(ランキングは2017年7月発表のITTF世界ランク)。卓球のダブルスは交互に打球をするルールだが、左利き(森園)と右利き(大島)で組むと互いが邪魔になりにくく、同じ利き手同士で組むよりも有利とされている。さらに大島の豪快なフォアから繰り出されるパワードライブと、森薗の台上のテクニックが、このペアの多彩な攻撃を可能にしていた。
中でも森薗が得意とするのが「チキータ」だ。
ラケットが下に向くほど手首を捻り、ボールを払うように放つチキータで多くの選手を打ち破ってきた。
だが「それも研究されちゃうと途端に勝てなくなるんです。最後はフィジカル勝負なんですよ」。
勝負を最後に左右するというフィジカル。森薗が特に力を入れたのが下半身の強化だ。
「180cmくらいが卓球選手としては理想。手足が長いから左右に振られた時に手を伸ばすだけで届きますから」
一方、森薗は身長160cmと小柄な部類だ。だからこそ一歩でも早く、遠くに踏み出すために筋肉を大きくするダッシュを繰り返した。
森園は、2年前と比べて太ももは陸上の短距離選手のような太さになっていた。素振りを続けてきた左腕も、右腕に比べると1.5倍ほどの太さになったという。