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卓球“世界最強の中国”に勝つには?
世界2位、森薗・大島ペアの過酷な道。
text by
武田鼎(Rallys編集部)Kanae Takeda
photograph byKei Ito
posted2017/07/22 07:00
森薗が得意とするチキータが、48年ぶりの快挙を生んだ。東京五輪までの残り3年。どこまで進化できるか?
まさかの1回戦負けで、次はメンタルの強化へ。
「引きずっていた」敗戦からの立ち直りは意外なほど早かった。
蘇州大会から9カ月後の2016年1月ドイツオープン、同4月のポーランドオープンで優勝。周りからの評価とは裏腹に、森薗たちの胸に去来したのは異なる思いだった。
「勝っても勝っても虚しかったんです。中国が上位までこない大会で優勝しても……って思っていました」と明かす。それどころか「毎日、強くなっているのか不安でしょうがなかった」と答える。
その不安が結果に現れたのが、ドイツ、ポーランドの連続優勝から2カ月後、2016年のジャパンオープンだ。
ここでブラジルペア相手にあっさり1回戦敗退を喫してしまったのだ。
「僕のチキータもキレがない。大島さんのフォアも入らない。酷すぎて。お互い口をきけないくらい関係は悪くなっちゃって……」と振り返る。
メンタル面がプレーに及ぼす大きな影響に気付かされた。それでもツアーにいけばホテルは2人一部屋だ。嫌でも顔をあわせなければならない。「気まずい」と思ったことも多くあった。
それから森薗はメンタル面の強化にも取り組むようになる。同じ卓球選手である姉の紹介で、格闘家やオリンピック選手などの一流アスリートをケアしてきた鈴木颯人にメンタルコーチを依頼した。
「勝負に必要なことをシンプルに考えるため」
森薗が鈴木のありがたみを感じるのは、試合前夜の電話だ。
「鈴木さん、やばいっす。寝れないっす」
そう切り出す森薗に鈴木は「もう一回思い返してみ、それって実際に試合に必要な思考かな?」とだけ答え、気負いを解消していく。
長いと2時間にも及ぶ森薗の話にただ相槌を打つだけだ。
森薗は「第三者が聞いたら、多分大したこと言っていないはずなんですよ(笑)。勝負に必要なことをシンプルに考えるんです。そうやって鈴木さんと話していくと、とにかくクリアに、シンプルになる」のだという。