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卓球“世界最強の中国”に勝つには?
世界2位、森薗・大島ペアの過酷な道。
posted2017/07/22 07:00
text by
武田鼎(Rallys編集部)Kanae Takeda
photograph by
Kei Ito
相棒とガッチリと抱き合い、両手を突き上げて吼えた。感情をむき出しにしてプレーする“森薗政崇らしい”雄叫びだった。
2017世界卓球、ドイツ大会でのことだ。
森薗は男子ダブルスで大島祐哉と出場、準決勝でチェン・ヨンソク&イ・サンス組(韓国)を破り、男子ペアとしては1969年のミュンヘン大会以来「48年ぶりの銀メダル」を確定させた。「ひたすらに“卓球力”を磨き上げてきた。大島さんとのペアなら世界一も狙える」と自信を覗かせる。
勝ち名乗りを上げた瞬間、喜びのあまり顔を覆った。涙は見せなかったがその顔は泣いていた。「48年ぶり」という達成感だけではない。もう1つ理由があった。この勝利は自分たちの“トラウマ”とも言うべき過去の苦い敗戦を乗り越えた瞬間でもあったからだ。
それを紐解くためには時計の針を2年巻き戻す必要がある。
森薗はこう振り返る。
「自分たちになかったものは“閃き”だったんです」
森薗が語る「閃き」とはなにか――森薗・大島ペアの「心技体」の進化を追った。
2年前のトラウマが、ずっとふたりを苦しめてきた。
遡ること2年、2015年・世界卓球選手権蘇州大会。
準々決勝で森薗・大島ペアは当時「最強」との呼び声高かった世界ランク2位のシュー・シン(中国)と同3位のジャン・ジーカ(中国)のペアと対戦した。最終第7ゲーム、森薗たちは10-8でマッチポイントを握っていた。
当時、森薗20歳、大島21歳。
若きペアが世界最強ペアを追い詰めたとあって会場も異常な盛り上がりを見せていた。
だが……そこから逆転負けを喫してしまったのだ。
「何が起きたかわかんなかった。試合中は興奮してるし、次から次へとラリーが始まる。マッチポイントをとっておきながら勝てない理由がわからないです」
あと1点が遠かっただけではない。「何もわからないまま」に負けてしまった。試合後は憚ることなく号泣した。
号泣したあとに待っていたのは茫然自失の状態だった。
「あとちょっとで世界最強を倒せたはずだった。とにかくひきずりまくりましたね……」
そこから森薗・大島ペアの苦悩の2年間が始まった。