イチ流に触れてBACK NUMBER
イチローも仰ぎ見るMLBの偉人。
「王さんに通じるもの」とは何か。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byAFLO
posted2017/07/12 11:30
イチローが、またひとつ偉大なプレーを歴史に刻んだ瞬間。カルーが引退した40歳を越えても、なお進化・成長し続ける男の背中である。
酷似していた、カルーとイチローの打撃理論。
カルー氏とイチロー。現役選手としてふたりの接点はなかったが、右投げ左打ち、1メートル80センチで細身の体格、米国外出身者で打撃スタイルも似ていることから、'01年のイチローデビュー以降、ふたりは何度となく米国内で比較されてきた。
最も有名な話は、イチローが大切にする「バットのグリップエンドが左耳の前に残る」と説明する技術と、カルー氏の「腕を出来るだけ頭の後ろに残せ」の打撃技術論が時代を越えて酷似していることである。
そのふたりが対面し、言葉を交わし合ったのは、カルー氏の現役引退から20年以上が経ったイチローのマリナーズ在籍時だった。イチローはその時に受けた感銘を忘れることが出来ないと言う。
「実際にお会いした時に、なんかこう……溢れる空気が……すごい僕のことを気にかけてくれているのが伝わってきた」
異国に渡り、異文化の中で戦う苦労とストレスは、経験した者にしかわからない。
カルー氏はイチローが米国で奮闘する姿と自身の若い頃を重ね合わせた。
カルーからイチローへ渡された一通の手紙。
昨年の3000安打達成時には「この手紙をイチローに渡して欲しいんだ」と共通の知人に依頼し、思いを手紙にしたためた。もちろん、イチローには嬉しい手紙となった。
「(引退してから)時間が経つと、野球のことをすごく簡単に出来ると思う人が多いじゃないですか。でも、あれだけの成績を残した人が、あの雰囲気でいられる。選手として、凄い人はいっぱいいますけれど、時間が経ってからもこの人凄いなって思える人はなかなかいない。その意味でもロッド・カルーは僕の中で、アメリカで会った人の中では強烈な印象を抱いた人ですね」