プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人を悩ます「8番小林誠司」問題。
若手を抜擢できないのも実は……。
posted2017/06/30 11:50
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
「若い選手を育てるために補強は必要だ」――巨人の原辰徳前監督の言葉である。
巨人は補強するから若手が育たない、と言われる。今回の球団ワースト記録となった13連敗の最中にも、それに続く堤辰佳GMの“解任劇”のときも、こう指摘する声を聞くことが多かった。
この論は当たっていなくもないが、ただ巨人というチームの実情を分かっていないお題目に過ぎないとも言える。
というのも、巨人では歴代監督が、常に求められ続けるのが、まず「勝つ」ことだからである。その上で若い選手を「育てる」。勝ちながら育てるという二律背反のテーマを背負っていることが、巨人というチームとそれを率いる監督の難しさなのである。
岡本を育てるのか、それともマギーを使うのか。
もちろん就任2年目となる高橋由伸監督も、優勝というミッションは変わらない。
特に就任1年目の昨シーズンは広島に17.5ゲーム差という大差で敗れている。それだけに今季は絶対優勝、という重い十字架を背負ってシーズンに臨んだ。それをバックアップすべく、編成を担当した堤前GMが昨オフに行ったのが総額40億円とも言われる大補強だった。
その結果、また勝つことと育てることのせめぎ合いが起こっているように見える。
例えば阿部慎之助と村田修一がいるのに、なぜケーシー・マギーを獲得したのか? 背景には一昨年に阿部が故障で戦線離脱した際に、極端に戦力ダウンした反省があった。
今季も阿部は慢性的な首の故障と下半身に爆弾を抱えて、フルシーズン働けないことを計算してチーム編成をしなければならなかった。
マギーを獲らなければ、阿部離脱の際には村田を一塁で起用して外野にコンバートした3年目の岡本和真を、本職の三塁で育てることができたという声を聞く。ただ普通の選手なら、岡本でカバーするという考えもあるかもしれないが、阿部の抜けた穴というのはそうは簡単にカバーできない。
阿部は巨人打線の要であり、ある程度、高い水準で抜けた穴を埋められなければ、直接、得点力に影響するのは一昨年の結果が証明している。決して若手を我慢して使って埋まる穴ではないのである。