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日本選手権の決勝に2人の現役医大生。
陸上界は「文武両道」の理想モデル?
text by
別府響(Number編集部)Hibiki Beppu
photograph byAFLO
posted2017/06/28 07:00
サニブラウンと山縣亮太の間に挟まれた高橋周治。順調にいけば2年後には100mを10秒台で走るお医者さんが誕生することになる。
医師国家試験と東京五輪を目指す女子も。
実は今回の日本選手権では、他にも決勝の舞台に立った医学生がいる。女子800mで8位に入った広田有紀(秋田大)だ。
広田は新潟高2年時の国体、3年時の高校総体でともに800mで優勝。全国トップクラスの競技力を持ちながら、眼科医の母の影響もあり、国立の秋田大医学部へと進学した。
当初は勉強と競技の両立に苦しんでいたものの、少しずつリズムを構築し、昨年の日本選手権も4位に入賞するなど第一線で活躍。大学3年生だった昨季には自己ベストも更新するなど、躍進を続けている。
今回の決勝後には、不完全燃焼に終わったというレースをこう振り返っていた。
「正直、今回は直前に風邪をひいてしまって、棄権しようかとも考えていたんです。でも、いままでサポートしてくれた部員の仲間や家族から、『出てほしい』みたいな空気を感じて。正直準備不足なところもありましたが、そういう状態でも決勝まで行けたので自分としてはちょっと自信がついたというか、ホッとしています」
海外では多いが、日本のスポーツ界では少ない文武両道。
広田の目標は2020年の東京五輪出場と、医師国家試験の合格。まさに究極の“文武両道”ということになる。
「自分の中でのポリシーとして、『とりあえず出る』ではなくて、しっかり調整して、ある程度自信を持ってから大会へ出ようというのは去年から決めていたんです。でも、今年改めて思うのは、そんなに準備ができていなくてもメンタル強化のためにも大きい大会には出ておかないと、と反省しています。2020年はまだ私にとっては大きな夢ですが、そうやってメンタル面を強化していくことも大事だと思います」
海外ではサッカー元ブラジル代表のソクラテスや、広島東洋カープで活躍したゲイル・ホプキンス(米国)など、アスリートでありながら、医学をはじめ勉学の道を志すケースは決して少なくない。
一方で、日本では今でも「1つのことに集中するのが素晴らしい」という考えが根強くあるように思う。特にスポーツの世界ではそういった風潮は強く、勉学のために競技をあきらめたり、競技を続けるために勉学をあきらめる選手も、数多くいる。