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日本選手権の決勝に2人の現役医大生。
陸上界は「文武両道」の理想モデル?
posted2017/06/28 07:00
text by
別府響(Number編集部)Hibiki Beppu
photograph by
AFLO
「第3レーン、高橋周治君。愛知医科大学」
競技場のアナウンスに、スタンドからどよめきが起こる。きっと、テレビの前で「おやっ?」となった陸上ファンの方も多かったのではないだろうか。彼への声援は他のスプリンターへのものとは少し、毛色が違ったかもしれない。
その理由は、彼が日本のスポーツ界において、最高峰の舞台ではなかなか見ることがない「現役医大生」だったからだ。
6月23日から25日まで大阪・長居陸上競技場で行われた陸上の日本選手権。最大の注目は、過去最高レベルとまで言われていた男子100m。関東地区ではテレビ中継の視聴率が13%を超えるなど、陸上競技としては異例の関心を集めていた。
サニブラウン・アブデルハキーム(東京陸協)、多田修平(関学大)、ケンブリッジ飛鳥(Nike)、桐生祥秀(東洋大)ら日本人史上初の9秒台を狙う強者たちが居並ぶその決勝の舞台で、高橋は昨年のリオ五輪銀メダリストの山縣亮太(セイコー)と優勝したサニブラウンの間に挟まれながら、雨中の悪天候の中、10秒43で7位。昨年に続き2年連続での入賞となった。
自己最高は10秒27、全国タイトルもある。
高橋はレース後、ハイレベルなレースで戦えた充実感をこう語っている。
「今シーズンは絶不調で、一時は日本選手権は欠場しようかと悩んでいましたが、土壇場で調子が戻り、なんとか2年連続で決勝に進むことができました。一競技者として、今回のハイレベルな戦いで同じスタートラインに並べた事はとても良い経験になりました。もう一段階上にいけるように、これからも頑張ります」
東海地方屈指の進学校である東海高から1浪して愛知医大に進学。現在は4年生だ。受験勉強もあり陸上競技からは2年の間離れていたが、大学入学後に再開。そこから記録が伸びはじめ、自己最高記録は10秒27を誇る。追い風参考の条件では、10秒15の好記録も持ち、昨年秋の国体では愛知県の代表として4×100mリレーに出場し、初の全国タイトルも手にしている。