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「元プロ」全員が名指導者ではない。
高校野球に今こそ必要な機関とは。
posted2017/06/21 07:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Kyodo News
今夏の甲子園を占う各地区大会の予選展望が各雑誌でピークを迎えている。
どこも“清宮、清宮、清宮”と大きく取り上げる一方、最近の特集で必ず取り上げられるのが、元プロの指導者の存在である。
プロ野球出身の監督は、年々増えてきている。
日本の野球界にはプロ・アマ規定というルールがいまだ存在している。プロとアマは交流してはいけないという断絶の歴史があり、プロ経験者は高校球児を指導できなかった。
これは、元プロ野球選手の再就職先が限られるという問題だけではなく、様々な経験をした人物の知識や財産を、野球界全体に還元できないという損失を生んでいた。
「本来は、指導者が学ぶ機関を作るべきだと思う」
だがこの流れを変えるため、1984年に「10年の教諭経験」という条件付きで道が開かれる。10年後の1994年には「5年の教諭経験」、1997年に2年と期間が短縮された。そして、現在はプロ・アマ合同の「学生野球資格回復制度研修会」を受講すれば、学生指導の権利を得られる。
かつての規制の網が張り巡らされていた時代を考えれば、大きな進歩である。
とはいえ、新たな問題が発生しているのもまた事実。それは元プロの指導者が、指導力があるのかという問題だ。
「本来は、指導者が学ぶ機関を作るべきだと僕は思いますね」
そう語っていたのは大阪偕星の山本皙(やまもと・せき)監督だ。山本は韓国プロ野球に1年だけ在籍した経験があり、プロ・アマ規定に引っ掛かった。だがプロを引退後、語学力を生かして英語教員となると、2年の教諭経験を経て2002年に倉敷高校の監督に就任。現在は大阪偕星学園で指揮を取り、2015年夏には同校を甲子園初出場に導いている。