野球善哉BACK NUMBER
「元プロ」全員が名指導者ではない。
高校野球に今こそ必要な機関とは。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2017/06/21 07:00
2015年夏の甲子園を前に指導する山本監督(右)。ユニークな経歴で裏打ちされた経験は、激戦区の大阪でも異彩を放つ。
「学生野球資格回復制度研修会」を受講してみた。
筆者は昨年12月、東京で開催された元プロ野球選手のための「学生野球資格回復制度研修会」の3日のうち、2日間に受講に近い形で参加した。
2日間の講習で感じられたのは、元プロ指導者が、学生を指導する現場に立つ夢が叶った時に戸惑うことがないよう、高校野球指導のために必要な知識を説明しようという高野連の意図だった。そこには過去にプロ・アマ断絶の歴史は感じられず、日本の野球界をよりよくしていこうという姿勢が感じられた。
しかしそれに加えて、今の野球界がさらなる進歩を生んでいくために、もう一歩の改革を進めていかなければいけない。
それが山本のいう、指導者の育成機関だ。
中田翔キラーだった投手も勉強したいと意欲を持つが。
研修会では、懐かしい顔にも会うことができた。元ロッテの左腕投手、植松優友だ。
金光大阪高校時代、中田翔(日本ハム)キラーとして知られ、夏の甲子園にも出場している。'07年の高校生ドラフト3位で日本ハムに入団したが、プロでの登板は2試合のみで'15年に引退していた。研修会に参加しているということは、指導に興味があるということかと、少し話を聞いてみた。
「いろんなことを今は知りたいなと思います。野球を小さい頃からやってきたので、ボールをどうやって投げるとか、身体の使い方は分かる。それについては教えられますけど、それ以外のことをもっと勉強したいと思っているんです」
残念なのは彼が持つ向上心に応えられる、勉強のための機会があまりないという事実だ。彼ほどの実績では、プロ球団のコーチになることは簡単ではない。かといって高校野球に身を転じても、体系だった野球の指導法を学ぶ機会がないまま、結局は経験則だけで教えることになるというのが現実だ。
日本の野球界は、指導者をいかに育てていくのか。それに応える指導者育成機関の設立こそ、次なる大きな課題のような気がする。