プレミアリーグの時間BACK NUMBER
FA杯優勝を“花道”にすべきだった?
ベンゲル続投にファンが賛否両論。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2017/06/04 07:00
勝負弱い印象がついてしまったベンゲルだが、今回のFA杯獲得はコミュニティーシールドを除くとアーセナルで通算10度目となるタイトル獲得である。
20年間も4位以内をキープした事実は驚異的だが。
それでもベンゲル本人、そして監督に厚い信頼を寄せるオーナーは、停滞ではなく安定と理解している。たしかに、チェルシーの半分にも満たない約6億8800万ポンド(1000億円弱)の補強費用で、20年間も4位以内を続けた事実は驚異的でさえある。
しかしリーグ優勝が夢に終わるシーズンを重ねるにつれ、オーナーは収益率、監督はトップ4に満足するクラブというイメージが強まってしまった。長らく高い安定感を誇ってきたベンゲル体制だが、今後は速やかな「変化」なくして否定的な向きを完全に見返すことなどできない。
その点はベンゲルも批判を「屈辱」と感じ、「受け入れることも忘れることもできない」と憤慨しているようだ。今回の契約に際してクラブ公式サイトで公開されたインタビューを見ても、最も強く感じられたのは続投に伴う決意で、目標は「継続的なプレミア優勝争い」と語ってもいる。
服装がカジュアルなポロシャツである他は、リーグ戦での会見のように真剣だったことからしても、ベンゲルは世間を見返す戦いのゴングが鳴ったと理解している。
サンチェスとエジル流出を避けることが最優先課題。
FAカップ優勝直後には、今夏の補強に関して「既存戦力の9割はそのままで1、2名の新戦力を加えられさえすれば」と語り、悪い意味で“ベンゲルのアーセナル”らしいスタンスを示唆していた。
だが、新契約直後には「トップ・トップ・クラス」の獲得を狙うと繰り返している。1億ポンド(約145億円)と言われる補強予算は、プレミアのビッグクラブとしては「巨額」とまでは言えないが、一線級の獲得が先延ばしにされ続けた中盤センターをはじめ、積極的に動かなければならない。
サンチェスとエジルの流出を避けるためには、年俸上限設定を見直す必要も生じる。週給14万ポンド(2000万円強)は、他のビッグクラブに移籍すれば倍増が固い。特にサンチェスは、ピッチ上で周囲への不満を隠し切れなくなったものの、その勝利意欲と得点能力が不可欠なものだった。
CLに出られない来季も引き留めるために、本人が望む週給30万ポンド台へと歩み寄る価値はあると思われる。同時に、今季トップ6で最多の44失点を招いた要因でもある守備を軽視せず、攻撃面と同等の意識と時間を割いて取り組むべきだ。