藤田俊哉の日欧蹴球比較論BACK NUMBER
藤田俊哉、コーチとして初タイトル。
オランダ1部昇格の幸せな体験。
posted2017/06/06 08:00
text by
藤田俊哉Toshiya Fujita
photograph by
Toshiya Fujita
それは、エモーショナルで幸せな時間だった――。
ハイベルデン会長とはオランダに渡る前から「VVVフェンロでこんな日を迎えよう」と約束していた。今シーズンの開幕前にはコーチングスタッフ、クラブスタッフ、選手たちと「心をひとつに」との誓いを立ててプレシーズンをスタートさせた。
昨シーズンも好調ではあったが、惜しくもリーグ戦は2位に終わりプレーオフの準決勝で敗れた。あと一歩で昇格に手が届かないという悔しい思いを、これ以上したくないと望んだ2016-2017シーズンに懸けるクラブの思いは特別なものだった。
オランダに来てからの3年半のクラブ状況を振り返っても、市民やサポーターからの関心度は明らかに下降線をたどっていた。ホームゲームの観客数も、5000人を下回るなど苦しい現実に直面していた。
書けばネガティブに思えるようなそれらを、優勝という結果をもって大きく反転させることが出来た。
離れかけていた市民の心を再び熱くさせることができたこの結果から、フットボールの持つ魅力をあらためて強く感じた。
優勝報告会には1万人を超える人々と喜び合えた。
優勝決定の翌日には、スタジアムから市庁舎までの3kmの道のりをオープンカー(バス)に乗ってパレードした。沿道に集まってくれた市民からの大きな声援を浴びながら、バスはゆっくり市庁舎広場へと向かった。
市内はものすごい数の人で埋め尽くされ、優勝報告会には1万人を超える数の人々が集まり、喜びを分かち合った。
日頃はコーヒーなどを飲んで、ゆっくり過ごしている広場が、スタジアムの収容人数をはるかに上回る数の人々で埋め尽くされたのである。その様変わりした光景を目の当たりにし、驚くばかりであった。