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被写体・羽生結弦が持つ特殊能力。
カメラマンも魅入る孤高のオーラ。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTsutomo Takasu
posted2017/04/11 13:40
圧倒的な集中力を見せるリンク上から一変、オーサーコーチに迎えられると破顔一笑する。このギャップも、羽生が持つ魅力である。
「真・4回転時代」に入り、争いは熾烈を極める。
今季、フリーではなかなか納得いく1枚が撮れていなかったという高須カメラマンだが、世界選手権のフリーでは、羽生選手が完璧な演技を見せてくれたこともあり、狙っていた瞬間ではなかったというが、この1枚を収めることができたという。どのポジションで撮影するか。試合前に散々悩んだ末に、最初に考えていた“狙い”を貫こうと誰もいないポジションを選択し、“撮りたい瞬間”をおさえようとシャッターを押し続けたことが功を奏したようだ。
現在、男子フリーは羽生選手自ら「真・4回転時代」と呼ぶように、あらたなステージに突入している。来年2月に開催される平昌五輪でも、4回転ジャンプを跳ぶのは大前提。種類や本数がカギを握ると予想される。
五輪が開催される来季は、羽生選手を筆頭に、世界選手権2位の宇野昌磨選手や4回転時代の申し子と呼ばれる17歳のネイサン・チェン選手(アメリカ)、難易度の高い4回転ルッツも跳べる金博洋選手(中国)らが、ますます熾烈な争いを繰り広げるだろう。
彼のような革新者、突破しようとする人がいないと……。
4回転ジャンプは戦国時代に突入しているが、さらなる高みを目指す羽生選手は、願ってもないチャンスと捉えているのかもしれない。
今季、羽生選手が出場した全6試合を撮影している高須カメラマンも、「羽生選手が4回転アクセルへの意欲を語ったりもしていましたが、常にさらに高いレベルを求めている選手。それはつまり競技性が向上しているという証でもあると思うのですが、そういう状況こそ、羽生選手が望んでいたものではないのかなと感じますね。男子の選手の中で一番最初に合計300点超えをしたのは羽生選手でしたが、彼のような革新者、突破しようとする人がいないと競技性はなかなか向上しないですよね」とみている。
常に己に妥協を許さない羽生選手。
「ファインダー越しに見ていて、“進化”というよりも、やるべきことを着実に積み上げているなという印象を受けます。もちろん、技術的に進化はしているんでしょうけれど。
“上へ、上へ”という上昇志向の強さは、今季に限らず常に持ち続けている。そういった気持ちを絶やさないし、燃焼し続けられていることは素晴らしいですよね。一体そういうモチベーションがどこから出てくるのか知りたいくらいです」(高須カメラマン)