野球善哉BACK NUMBER
大阪桐蔭・根尾昂は野球の常識の外。
片手捕球、ジャンプスロー、スキー。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/04/05 07:00
高校野球界では珍しいクローザーでもある根尾昂。類まれなる精神力が求められるポジションを2年生が務めるのは異例のことだ。
中学時代、冬場はスキーの選手だった。
そして実は、根尾が遊撃手として魅せるプレーには、彼がこれまでに培ってきたある力が働いている。
それは体幹の強さだ。そしてその体幹は、野球以外の競技で鍛えてきたものなのである。
中学時代、根尾はスキーの全国大会で優勝し、世界大会にも出場している。中学までの競技歴ではスキーの方が長く、冬場は競技者(回転と大回転)としてスキーに力を入れていたのだ。
根尾は言う。
「下半身を動かした上で、身体がブレないというのがスキーでついた力ですね。野球ではダイビングで捕球したあとや体勢が悪くなったときの立て直しに、体幹の強さは生きていると思います。スキーでは頭が落ちるというか、前にぶれた時点で、それはミスになって転倒したり、バランスが崩れるんです。そうしないために身体がブレないように鍛えてきました」
マルチな競技経験が運動能力を高める?
昨秋の近畿大会準々決勝の智弁学園戦でも、印象に残るプレーを見た。
三遊間のゴロに飛びついた根尾がボールを捕球した瞬間、そのまま立ち上がるのではなく、身体がレフト方向に流れた反動を利用して、起き上がって反転してセカンドに送球したのだ。
日本では、野球ならば野球だけ、という選手は多い。しかし、ゴールデンエイジと言われる年代からいくつかの競技に取り組むことが、アスリートの基礎的な運動能力を高めることに役立つというのは、ここ近年言われている。そして根尾のプレーには他競技で培った運動能力が垣間見える。
そして、これまでのコメントから理解できるように、中学時代まで成績優秀だった彼の頭脳明晰さ、あるいは精神的な落ち着きといった部分も、プラスに働いている。