野球善哉BACK NUMBER
大阪桐蔭・根尾昂は野球の常識の外。
片手捕球、ジャンプスロー、スキー。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/04/05 07:00
高校野球界では珍しいクローザーでもある根尾昂。類まれなる精神力が求められるポジションを2年生が務めるのは異例のことだ。
中南米選手のような、派手な守備を見せる1年生。
スーパー中学生、スーパー1年生、そしてスーパースターと根尾の評判は段階的に上がっているが、そうした周囲の喧騒についても、根尾はいたって冷静だ。
「そうやって評価してくださっているのは嬉しいんですけど、まだ結果が伴っていないですし、全然いいプレーもできていない。自分のやりたいプレーをしっかりできるようにすることを考えています。周りからの評価は、あまり気にしていないです」
ことしのセンバツでは優勝投手となったが、もっとも出場回数が多かったのは遊撃手だ。
特に今大会で目立っていたのは、守備面だ。準決勝の秀岳館戦では、実に10個のゴロをさばいた(アウト7、内野安打2、失策1)が、凡人離れしたプレーを連発していた。堅実というより、華麗なプレーを連発する中南米選手タイプといったら分かりやすいか。
秀岳館戦の2回裏、周りを唸らせるプレーがあった。
セカンドベース付近に転がったボールに追いついて捕球すると、止まって送球姿勢を整えるのではなく、そのまま走りながら体幹を使ったランニングスローで1塁へ送球してアウトにしたのだ。
ステップの細やかさとスローイングに移行するボールの持ち替えの速さ、さらにはボールコントロール、高校野球ではまず見ないプレーだった。
西谷監督は「キューバの選手みたいでしょう」と根尾のプレーを評するが、まさに、MLBにいる中南米選手のようなのだ。
「自分らしさは捕ってから速く投げること」
片手で捕球するなど基本を外れたプレーは、日本では嫌われる。プロ野球でも、ロッテ時代のルイス・クルーズが、一、二塁間を抜けそうな打球に追いつき、バックトスで間一髪アウトにしたことがあった。
しかしそのスーパープレーに対して、名だたる解説者たちは「絶対にマネをしないでほしい」と口を揃えた。基本重視の考えは、今も根強い。
捕球体勢をきれいに整え、ボールを捕球する際は両手を添えるのが基本形。そのなかにあって、根尾は片手でさばくことが多い。「軽い」と評する人もいるが、根尾自身は、アウトにするための最善策としてのプレーだと説明する。
「(ジャンピングスローは)軽いプレーではあると思います。自分でも、もうちょっと丁寧に行くべきかなとは思うんです。でも、アウトかセーフかギリギリの局面だと、あのプレーが必要なことがあります。ボールは身体の中で捕る方が確実性は上がるんですけど、自分らしさは捕ってから速く投げること。足を使って、片手で捕球して手でパパってやった方が速くなる。でも、確実性は課題ですね」