プレミアリーグの時間BACK NUMBER
CL大量失点、謎のサンチェス外し。
「ぬるま湯」化したベンゲル采配。
posted2017/03/11 11:30
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
『ショー・マスト・ゴー・オン』。筆者がアーセナルのスタジアムDJだったとしたら、バイエルン・ミュンヘンを迎えたCL決勝トーナメント1回戦第2レグで、このクイーンの名曲を入場アンセムに選んでいただろう。
同曲がレコーディングされた1990年当時、ボーカルのフレディ・マーキュリーは迫り来る自らの最期を覚悟していた。翌年に病死する運命にあったマーキュリーが「何があっても続けなければ」と熱唱する入魂のパフォーマンスに、聴く者は彼の悲壮な決意を感じずにはいられない。
アーセナルにも同様の覚悟が必要だった。契約最終年ということもあり、今季末の退任を求める声が増すアーセン・ベンゲル監督には悲壮感が漂っていた。同曲の歌詞には「いつもの苦悩、またも儚く破れたロマンス」というくだりもある。2004年を最後にリーグ優勝のないアーセナルは今季も、1月末のワトフォード戦(1-2)、2月頭のチェルシー戦(1-3)での連敗で、プレミア優勝争いから事実上脱落していた。
守備の脆さ、集中力の欠如で大量失点というパターン。
そしてクラブ史上初のCL優勝という夢も、2月半ばのバイエルン戦第1レグでの大敗(1-5)で風前の灯火と化していた。ミュンヘンでの敗戦後、会見で自軍の不甲斐なさに憤ることさえできず、ただただ落胆の様子だったベンゲルの姿は見るに忍びないものがあった。
無理もない。バイエルン相手の5失点は、昨季のCLグループステージに続く惨敗だった。今季は第2戦をホームで戦える利点があったとはいえ、最低でも「4-0」勝利を必要とする絶望的な状況に陥ってしまったのだ。加えて第1レグでは後半に4失点を喫し、守備面での組織力、集中力そして統率力の不足という、指摘されて久しい弱点のオンパレードのようでもあった。
そこに追い討ちをかけた、プレミア前節リバプール戦での完敗(1-3)。ライバルとの直接対決に敗れたアーセナルはCL圏外の5位に転落した。この試合では得意であるはずの攻撃すらままならなかった要因は、アレクシス・サンチェスにベンチスタートを命じた指揮官自身の判断にあった。