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CL大量失点、謎のサンチェス外し。
「ぬるま湯」化したベンゲル采配。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2017/03/11 11:30

CL大量失点、謎のサンチェス外し。「ぬるま湯」化したベンゲル采配。<Number Web> photograph by Getty Images

手塩にかけた若手と、各国の名手を融合させる路線で戦い続けたベンゲル。しかし主力の心をつかめなければ、持ち味の攻撃的スタイルは輝かない。

プレミアで一番得点に絡んでいるのだが……。

 そのチームにあって、サンチェスは芯の強さを備えている数少ないタイプだ。極端な言い方をすれば、その存在がチームの和を乱していようがいまいが、アーセナルのフィールド選手は「サンチェス+9名」とみなされても仕方のない現状だ。

 今季のサンチェスはリバプール戦後までで17ゴール9アシスト、計26点に絡んでいる。この数字はチーム内はもちろん、プレミア全体でも最高の数字である。ボーンマス戦(3-3)で反撃の狼煙を上げたダイビングヘッドと、バーンリー戦(2-1)で決めた後半アディショナルタイムのPKがなければ、リーグ優勝は1月時点で現実味を失っているところだった。そしてCLバイエルン戦第1レグでもアウェイゴールを決め、リバプール戦でも途中出場ながらアシストをマークし、一矢を報いている。

 結局のところ、戦況を見かねたベンゲルは、ベンチで「お仕置き」を与えたはずのエースを後半のピッチに送り出さざるを得ない状況だった。そのサンチェスの投入が、前向きな影響をチームにもたらした。ゴールを決めたダニー・ウェルベックをはじめとした攻撃陣は、闘志と勝利への意欲を剥き出しにするサンチェスに触発された。

もしスアレスを獲得していたとしても、同じ状況に?

 サンチェスについて、同じ南米出身であるルイス・スアレスと「似ている」と語ったのは他ならぬベンゲルである。4年前、ゴールと勝利に強欲なスアレスを欲しがりながら手に入れられなかった指揮官は、翌年サンチェスを獲得した。

 だが、サンチェス獲得後のアーセナルを見る限り、仮にスアレス獲得に成功していたとしても、サンチェスと同じく不満を募らせる状況を招いたように思える。実際、スアレスはリバプールからバルセロナへと去り、得点源としてその才能を一層開花させている。その一方でサンチェスは、大衆紙が「ブレグジット(英国EU離脱)」ならぬ“アレグジット”と報じたように、アーセナルからの離脱が濃厚と見られている。

 リバプール戦後、自身の判断が裏目に出たと認めたベンゲルは、バイエルンとの第2レグ前日練習を、サンチェスら選手たちとの握手で始めたと報じられている。CL敗退回避は不可能と言われる状況でも、一丸となって「戦い続けるしかない」という決意をチームに促したかったのだろう。

【次ページ】 試合前から「ベンゲル退任を!」の声も出ていた。

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