濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
中国の選手が史上初のK-1王者に。
世界の格闘界に新たな潮流誕生か?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2017/03/08 07:00
K-1の新たなステイタスを、ウェイが世界へ発信することができるか? 防衛戦も早いうちに日本でやりたいと発言している。
金が集まると、人が集まり、優秀な人材も育つ。
経済成長につれて、中国はスポーツやエンターテインメントの一大マーケットになった。
格闘技も人気コンテンツであり、海外から強豪選手、たとえばK-1 WORLD MAXで一世を風靡したブアカーオなどを招聘するようなビッグイベントがいくつも開催されている。金が集まり、人が集まれば優秀な人材も育つ。
以前は「攻撃力はあるが動きが雑」、「肉体は頑丈だが技術が偏っている」という印象があった中国人選手だが、「自分は散打(中国武術)とキックボクシングの長所をハイブリッドしたファイター」だと言うウェイは、タフでパワフルで、かつ隙がなかった。
何より驚いたのは、1日3試合すべて違う闘い方を見せたことだ。
散打、キックボクシング、ムエタイ、ボクシングを融合。
1回戦はパンチによる早い段階でのKO。
準決勝は相手の攻撃を当てさせず、ほぼノーダメージでクリアしている。その距離感は抜群と言うほかなかった。
決勝ではローキックの連打をもらいながらパンチで前進し、手数で判定をものにしている。いわば“気合いの勝利”という面もあった。
「チームの面々が相手を研究して、試合ごとにどう闘えばいいかを教えてくれました」というウェイだが、それを実行できるのは能力が高いからこそ。「自分は相手のウィークポイントを見つけたり、試合の流れをコントロールすることに長けていると思います」とも言う。
ウェイは散打をベースにキックボクシング、ムエタイを学び、ボクシングの練習もしている。
ジムにはオランダやタイからトレーナーが次々とやってくるそうだ。そういう環境で育てられた“対世界”用のファイターとしての、おそらく最高傑作の1人がウェイなのだろう。中国のリングでは、元ムエタイ王者に勝ったこともある。