濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
格闘技新時代を告げる「KNOCK OUT」。
無敗の18歳、那須川天心の強さに酔う。
posted2017/02/19 07:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Susumu Nagao
大会開始時刻の17時を前に、大田区総合体育館の客席は大半が埋まっていた。
2月12日、この会場で行なわれたのはキックボクシングのイベント「KNOCK OUT」。昨年12月に続いて2度目の開催だ。
キックボクシングの大会が第1試合から満員になることは珍しい。普通は前座試合から後半戦にかけて徐々に観客が増えていくものだし、試合を大量に組み、選手が友人などの“応援団”にチケットを売ることで動員を増やすタイプの興行もある。その場合、応援団の目当ては1試合だけだから、途中から来て途中で帰るのが当たり前だったりもする。
だが「KNOCK OUT」は全7試合とコンパクトだ。
「前座という考え方はありません」とプロデューサーの小野寺力は言う。試合数を絞るのは、運営母体である「ブシロード」の方針でもある。
新日本プロレスをブレイクに導いたことでも知られるこの会社は、「観客の集中力を切らさずに全試合を楽しんでもらう」という真っ当な見せ方をキックボクシングに持ち込んだ。
照明やビジョンを使った演出、インターネットでの記者会見中継なども含め、沢村忠の時代から続く歴史ある格闘技に現代的なパッケージングを施したとも言える。
井岡一翔を倒した元王者と無敗の18歳が対決。
現代的な格闘技、というとK-1が思い浮かぶが、「KNOCK OUT」はあくまでキックボクシング。3分5ラウンド、ヒジ打ちが認められ“打倒ムエタイ”が大きなテーマとなる。
現役時代、K-1ブームに背を向けてキックボクシングにこだわった小野寺いわく「ヒジは超接近戦、10cmでも隙間があれば決まる。もちろんパンチも蹴りもある。あらゆる距離でKOが生まれるのが魅力なんです」。
「KNOCK OUT」の主役の1人は、ムエタイの殿堂ラジャダムナン・スタジアムのベルトを持つ梅野源治。
もう1人が那須川天心だ。
昨年末、「RIZIN」でのMMA挑戦で一気にファンを増やした無敗の18歳である。