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川口能活が語る韓流GKブーム。
「日本人との差は跳躍力と……」
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/02/17 08:00
試合前には柔和な表情を見せるチョン・ソンリョン。憧れの選手はオランダ代表の守護神として君臨したファンデルサールだという。
日本でも育成年代からフィジカルを鍛えるべき。
キック時のパワーが、GKにとって貴重な武器ではあるのは間違いない。ただし、川口はもっと重要なことがあると説く。
「もちろんロングキックの飛距離が出れば、味方にとっては楽です。でも、たとえ飛距離が出なくても、それはチーム戦術によってカバーできる。例えば鹿島のソガ(曽ヶ端準)は、キックの飛距離はそれほど出ませんが、ロングフィードを蹴る場合には、チームとしてサイドへ蹴ることを徹底して、そこに空中戦の強い選手を置くことで解決していた。昨季、キックの飛距離だけを考えたら、鹿島はソガではなく櫛引(政敏)を使っていたはずですから。ソガにはキックの飛距離を補って余りある技術や経験があるし、鹿島はそれを優先したのだと思います。
GKのベースとなるのは、この技術や経験、センスです。例えば190cm以上あるGKが、必ずしもハイボールに強いとは限らない。レアル・マドリーのケイロル・ナバスのように180cm台のGKでも、クロスを最高点でキャッチできる技術やセンスを備えていることのほうが、ハイボール処理では重要ですから。この細かなポジショニングやシュートストップの技術、センスに関しては、日本人GKと韓国人GKに大きな差はないと思います。だからこそ、日本でも育成年代からGKとしてのフィジカルを鍛えるようなトレーニングが必要なんじゃないかと思うんです。韓国人GKにできることが、体格の近い日本人GKにできないはずがありませんから」
「Kリーグでプレーしてみたい」と思っていたが……。
川口は韓国人GKの能力を高く評価する一方で、危機感も抱いていた。ジュビロ磐田のカミンスキーを含めれば、J1の18クラブ中6クラブの正GKを外国人選手が務めることになる。それは日本人GKがトップカテゴリーの試合を経験できなくなることを意味する。
実は韓国も、同じ問題に直面していた時期がある。川口が磐田時代、チームメイトのイ・グノに「俺も将来、チャンスがあればKリーグでプレーしてみたいな」と言うと、こう返された。
「韓国人としてその気持ちは嬉しいんですけど、残念ながらヨシカツさんはKリーグでプレーできないんです」