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内村航平のプロ化で収入や活動は?
日本体操界初の試みは成功するか。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2016/12/19 11:00
内村航平は日本の五輪アスリートの象徴的存在である。体操選手のプロ化という道を切り開くことができるだろうか。
スポンサーは制限が多く、意外と現実的ではない。
プロ転向後もこの契約は生きているため、内村が新たに個人スポンサーを募る場合は、JOCのスポンサー企業と競合しないカテゴリーの企業からのみとなる。さらには日本体操協会のスポンサーとも競合できない。JOCには10社、体操協会には4社がスポンサーとしてついており、業種のカテゴリーは合わせて13。多くの業種の企業とは最初から契約できないことになっており、新たな契約先を探すのは決して容易ではない。
また、例えば日本サッカー協会が定めるルールでは、協賛会社は選手6人以上を包括起用するという条項があるため、選手を単独で使うためには別の契約を結ぶ必要があるが、JOCのシンボルアスリート制度は単独でも起用可能なので、選手個人と契約を結ぶ必要がない。
つまり、内村が個人スポンサーと数多く契約を結びたいというのが第一の目的だとすれば、それは現実的ではないことが分かる。
実業団では難しい普及活動への意欲が理由?
それでもプロ転向を決めた理由は何か。それは内村自身が言っているように、より一層、体操の普及に尽力していきたい、という思いがあるからだ。
特に力を入れたいのが、子どもを対象とした普及活動。内村には、体操の基本的な動きである「でんぐり返り」、「逆上がり」、「逆立ち」などは、すべてのスポーツに通じるものだという考えがあり、現役選手として練習時間をしっかり確保しながら、随時、体操教室などの活動を入れていきたいという意向を持っている。
そして今回、反対や慎重な意見も多かった内村のプロ転向に関して、大きな後押しになったのが、10月に国際体操連盟(FIG)の次期会長になることが決まった渡辺守成氏(日本体操協会専務理事)だった。
渡辺氏はFIG会長選挙に際し、体操の世界的な普及と発展を公約として掲げて当選を果たした。日本人が国際競技連盟のトップに就任するのは、'94年まで国際卓球連盟の会長を務めた荻村伊智朗氏以来22年ぶりだった。