ブックソムリエ ~必読!オールタイムベスト~BACK NUMBER
“五輪の名花”に魅せられた著者が追う、
激動の半生。~政治に抗った女子体操
2連覇のチャスラフスカの信念~
text by
馬立勝Masaru Madate
photograph bySports Graphic Number
posted2016/12/30 07:00
『ベラ・チャスラフスカ 最も美しく』後藤正治著 文春文庫(重版未定・長期品切れ)
今年の8月、東京五輪、メキシコ五輪の女子体操個人総合で2連覇を果たしたチェコのベラ・チャスラフスカの訃報が伝えられた。その数日後、ガン治療を続けながら自伝執筆中という彼女の姿がNHK・BSで再放映された。“五輪の名花”は穏やかな老婦人となり、その笑顔からは自分の人生を真っ直ぐに生きた誇りがにじみ出ているように思えた。そんな感想を持てたのは本書を読んでいたからだ。
メキシコ五輪の1968年、チェコでは「プラハの春」と呼ばれる変革運動が起こった。これを支持する「二千語宣言」が発表され彼女も署名した。この運動はソ連の軍事介入で押しつぶされた。チャスラフスカは署名撤回を迫られたが拒絶した。冬の時代は20年も続いた。