オリンピックPRESSBACK NUMBER
内村航平のプロ化で収入や活動は?
日本体操界初の試みは成功するか。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2016/12/19 11:00
内村航平は日本の五輪アスリートの象徴的存在である。体操選手のプロ化という道を切り開くことができるだろうか。
欧州の賞金大会に出場する、という可能性も。
内村のマネジメントを担当するスポーツコンサルティングジャパンの西塚定人氏によると、プロ転向の意思を伝えた内村に対して、渡辺氏は「プロになるのは大歓迎だし、これからの日本の体操界はそうなっていかないといけない。そのために国内のレギュレーションも変えてもいい」とサポートを約束した。
渡辺氏は「世界一である日本の体操を、世界でアピールしてほしい。そのためにはプロになるのが一番だ」とも話していたという。プロになることで、チームに所属している形ではなかなかできなかった欧州などの賞金大会への出場も可能になる。
さらに内村には「震災復興」に寄与したいとの思いもある。11年3月の東日本大震災時は、4月からの入社が決まっていた埼玉県草加市のコナミスポーツ体育館で練習しており、世界選手権を数カ月後に控える中、計画停電など制限のある状態での練習を余儀なくされるなど、震災のつらさを多少なりとも身を以て知っている。
今年4月には故郷の長崎県の近くで熊本地震が発生し、親戚や知人も多くいる地域での大災害に胸を痛めた。5月のNHK杯で優勝を決めると、テレビカメラに背中を向け、ゼッケンの下に書かれた「熊本、がんばって!」の文字を見せ、どうにか励ましたいという気持ちを伝えた。
ロンドン五輪前後の宮城県訪問や、リオ五輪後の熊本県訪問を行なった経験からも「体操選手の立場で、少しでも勇気を与えたい」との思いを強くしており、今後もこのような活動をしていきたいと考えている。
コナミへの恩義を果たしてから、のタイミング。
27歳でのプロ転向については、遅かったのではないかという声も聞かれる。実際に内村自身にもロンドン五輪後からプロ転向の考えはあった。しかし、内村は性急には進めなかった。コーチングスタッフを含め、最高の練習環境を整えてくれるコナミスポーツに対し、きっちり役目を果たしてから独立したいとの考えを通し、リオ五輪で団体金メダルの目標を達成したことを機に、プロ転向を表明した。