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レアル・マドリーにヤンキース、レイカーズ……。世界的名門チームの名医たちが結集したSports Doctors Networkは、日本とアジアで何を目指すのか?
posted2025/06/03 11:00

text by

生島洋介Yosuke Ikushima
photograph by
Tadashi Hosoda
――Sports Doctors Networkとはいったいどんな組織なのでしょうか?
山田 SDNというのは、レアル・マドリーのメディカルアドバイザーであるニコ・ミヒッチ氏が中心となって、昨年10月にスペインで設立された組織です。もともとはアーセナルやパリ・サンジェルマン、ACミランなど欧州サッカー界のビッグクラブのドクターが連携したのが始まりですが、今ではMLBのニューヨーク・ヤンキースやNBAのロサンゼルス・レイカーズ、NFLのダラス・カウボーイズなど競技も横断し、スポーツ界で絶大な実績を持つ医師たちが集まっています。
太田 大西洋を越え、競技の垣根も越えたネットワークなんですね。
山田 ドクターも競技によって得意分野が異なりますが、彼らが繋がった“スーパーエキスパート集団”となれば、より高度なサポートができますから。
鈴木 僕が在籍していた浦和レッズのチームドクターのところにも、ラグビー選手やお相撲さんが、膝を診てもらいに来ていました。それぞれ専門分野を持ったドクターを世界規模で組織化したSDNで、情報や技術が共有されるわけですね。
山田 その通りです。連携することで、エリートアスリートに対して最適なケアを提供する。それも目的の一つです。そうした知見を一般の方々の健康促進に活かすことにも力を入れています。お二人は現役時代、自分の力を最大限に発揮するために、体調管理や休息の取り方を徹底されていたと思います。この自己マネジメントは、例えば日々の体調管理や集中力の維持など、普段の生活や仕事にも直結しますよね。つまり、一般の方々が仕事や勉強で成果を上げるためにも、あるいは病気や怪我にうまく対処することにも通じてくるはずです。
鈴木 実は僕も同じような思いで「AuB(オーブ)」を立ち上げたんですよ。自分たちが培ってきたものをサポーターの健康に貢献させられないかと。それがトップ選手の腸内細菌の研究だったんです。いわば、プロスポーツ界のデータを一般化するという話ですが、山田さんたちがそれを世界規模で、しかもとんでもないメンバーで進めているとは、もう興奮するしかないです。
太田 現役選手にとってもうれしいことですよ。勝利のために、いつも頭を悩ませて限界まで体を追い込んで得た叡智が、多くの人の健康に役立ててもらえるとしたら、こんなにうれしいことはない。モータースポーツで言えば、F1で勝つために開発された技術が、一般車に注がれるようなものですね。
鈴木 もちろん競技者なので、大切な知見やデータをライバルには絶対渡したくない。でも、それがファンや応援してくれる人の健康につながるなら、話は違います。これはドクターも、きっと同じでしょうね。ところで、山田さんはどういう経緯でSDNのCOO兼アジア代表に就かれたんですか。
山田 SDNは「医療×スポーツ」をテーマに活動しています。でも、一般の方の健康や福祉に貢献したいなら、きっと「食」も掛け合わせるべき。私は「食×スポーツ」にも携わってきたのですが、スペイン国王から勲章をいただいたことでレアル・マドリーのミヒッチさんの目に留まって。同時に、欧米とは体格や文化も異なるアジアが加われば、お互いに学べることが多いだろうということで、私はアジア代表として加わることになったんです。
太田 なるほど。こうしたグローバルレベルの組織で中枢にいらっしゃることは、すごく価値のあることだと思います。今年、IOCの会長選に渡辺守成さんが日本人として初めて立候補されましたが、組織を動かす側にいる日本人はまだまだ少ないように感じています。もう一つ知りたいのは、スポーツ分野では他にもPT(理学療法士)やAT(アスレティックトレーナー)などもアスリートの健康と運動に関わっていますよね。SDNには彼らの知見も加わっているんですか。
山田 もちろんです。トレーナーやリハビリの専門家、管理栄養士などもメンバーに入っています。日本とは違って、ドクターもトレーナーも同じ立ち位置にあるのも特徴です。
――SDNというグローバルな組織が目指すところがよくわかりました。では、具体的にはどんな活動をしているのですか?
山田 大きくは二つあります。一つは世界各地でのカンファレンス開催。もう一つは知見を活かした商品開発です。カンファレンスについては、世界各地で開いてSDNの知見を幅広く共有する機会を作っています。昨年6月、ハーバード大学医学部では、トップ選手のケアや、睡眠とパフォーマンスの関係など、幅広いテーマについて発表しました。そして今年6月にはアジア圏で初めてのカンファレンスを東京大学で開催します。今回はより“一般化”を意識して、医療関係者だけでなく、一般の方に聞いてもらえるような内容にしようと。レアル・マドリーやロサンゼルス・レイカーズの主治医、ハーバード大学の教授だけでなく、金メダリストの室伏広治さんや伊達公子さん、経済学者の成田悠輔さん、宇宙飛行士の山崎直子さん、92歳の現役トライアスロン選手である稲田弘さんにも登壇していただきます。そして、鈴木さんにも腸内環境のお話を。
鈴木 はい。腸内細菌ってまだ皆さんよくわからないと思うんですよ。でも、こういう場で発表することで、広く届いてくれるだろうと期待しています。今回、未病(まだ病気と診断される前のグレーな状態)の権威で東京大学特別教授の合原一幸さんをご紹介いただき、腸内細菌を活かしていかに病気を未然に防いでいくかというテーマでお話ししようと準備しています。腸内細菌はまだわかっていない部分もありますが、アスリートのデータから確実に見えていることもあるんですよ。
太田 カンファレンスで発信するだけでなく、実際にそうした知見を形にする動きもあるんですか。
山田 ええ。もう一つの大きな柱として、SDNの知見と日本のモノづくりの力を合わせて、アスリート向けの新技術や一般向けの健康関連商品の開発も進めています。例えば、日本の特許を活かし、体や環境に害を与えない日焼け止め、オーガニックのグルテンフリーでヴィーガンのサブレも出来ています。“メイド・イン・ジャパン”をこのネットワークとともに、世界に知ってもらいたいと思っています。
太田 日常的に使うモノにも世界トップのスポーツドクターたちの推奨、“SDN印”みたいなひとつの基準があると、僕たちとしては選びやすいです。
鈴木 結局、目指すところはみんなの健康ですからね、そこへ向けて日本発のプロダクトが増えるのはうれしいです。
太田 ところで、いくら知見やアイデアがSDNにあっても、商品化にはステップがありますよね。どういう流れで共同研究や商品開発へ進んでいくんですか。
山田 エリートアスリート向けの技術を活用したいと考える企業は、スポーツ関連企業だけでなくたくさんあるんですよ。とくに欧米ではかなり積極的に求められていて、SDNにもドクター個人にもそういったご相談があります。実際にスポーツ医学から発達したデバイスはすでに多くあって、例えばグルコース値をリアルタイムで測定できるウェアラブル機器もそう。
鈴木 確かに、健康促進のための機器は増えていますよね。我々の事業に近いところでは、例えばスマートトイレを作っている企業がアメリカにいくつかあります。便器に取り付けるデバイスで、尿をかけるとすぐにデータが取れる仕組みです。体の状態を判断して、どんな栄養を摂るといいかなどアドバイスが瞬時に出てくるんです。
太田 僕も胃腸が強くないので、体調変化のアラートがトイレでもらえるようになるとうれしいな。
鈴木 そういった研究開発の段階でSDNのドクター陣に相談できたら、すごくありがたいですね。いま、我々AuBもSDNとのコラボレーションで、スポーツに寄せた腸内環境を改善する商品開発を進めているところです。
太田 「for レアル・マドリー」の腸活サプリが出たらインパクトありますね(笑)。6月のカンファレンス、私はIOCの新会長就任式と重なってしまい参加できませんが、しっかりビデオで見させていただきます!
山田 ぜひ。カンファレンスでは、鈴木さんのお話をはじめ、一般の方にとっても身近なテーマを多く揃えています。こうした情報が、アスリートだけでなく日々を忙しく過ごす多くの人にとっても、毎日を元気に過ごすヒントになればうれしいです。
東京大学で開催される「Sports Doctors Network Conference 2025 in TOKYO」にNumberWebの読者をご招待
6月24日(火)に東京大学・安田講堂で開催される「Sports Doctors Network Conference 2025 in TOKYO ―最先端スポーツ医療を、すべての人へ―」。「医療×スポーツ×食」をテーマに、世界と日本を代表する叡智が語り合うカンファレンスにNumberWebの読者を先着で10名様ご招待いたします。
聴講ご希望の方は下の応募フォームからエントリーに必要な事項をご記入ください(※応募フォーム内、紹介者の記入欄に「Number」とご記載ください)。カンファレンス事務局より参加ご希望の方にご連絡差し上げます。応募締め切りは6月18日(水)。(会場までの交通費・宿泊費はご負担ください)
Sports Doctors Networkから生まれた「医療×スポーツ」のコラボレーション商品
6月3日よりwww.GeNiSDN.comにて先行予約受付開始
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