Jをめぐる冒険BACK NUMBER
岩政大樹が岡山に持ち込んだ鹿島流。
勝利の秘訣は「まだ言いませんよ」。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/11/29 17:30
鹿島で幾多のタイトルを手にした岩政大樹が岡山にもたらしたものは限りなく多い。「勝利の経験」はその最たるものだろう。
岩政が前線へ上がったもう1つの理由。
そのいろいろなディテールの1つが、パワープレーにおける駆け引きだ。
「(松本の長身FWの)三島くんが出てきて、僕が下がっていると三島くんに前に残られるだろうと。逆に僕が上がれば(マークのため)下がってくれて、そうしたら相手は守るしかなくなる。僕がなんとかしようというより、ゴール前でごちゃごちゃさせて何かを起こすことが大事だったので、(前線に上がることを)判断しました」
岡山のパワープレーを見ると、松本の長身センターバック飯田真輝を避けるように、手前にボールを放り込んでいる。それもディテールのひとつだったに違いない。
古巣・鹿島が川崎に勝つのを見て思い出したこと。
こうした一発勝負の大一番を迎えるうえで、岩政にとって大きかったのは、同じく一発勝負のJ1チャンピオンシップ準決勝だったという。岡山と同じように成績下位の鹿島アントラーズが成績上位の川崎フロンターレのホームに乗り込み、1-0で勝ち切った4日前の試合が、岩政をおおいに刺激した。
「鹿島のあの試合を見て、自分の中で思い出したことがあった。それがヒントとなって今日戦いましたので、彼らに感謝したいですね」
思い出したものとは何だったのか――。
「言いませんよ、来週(決勝)がありますから。来週もし勝って昇格したら言います」と岩政は笑って煙に巻いたが、一発勝負で起こり得ることについて、チームメイトには事前に伝えていたという。
「戦い方を変えるわけではないですけど、押さえるべきポイントはリーグ戦とは変わってきますから、そこを少し意識させながら。一発勝負で起こり得ることを想定すると分かるかもしれませんね。今日の松本にはやはり起こってしまい、うちには起こらなかった。鹿島にも起こっていなかったけど、川崎には起きてしまった。そこは、一発勝負の面白さだと思いますけどね」
リーグ戦とは違って、負ければ終わりの一発勝負は、ゲーム終盤を迎えれば迎えるほどプレッシャーがのし掛かる。そこで焦ったり、混乱したりしないで平常心でプレーできるかどうか。そうしたメンタル面の持ちように関することなのか、あるいは、絶対に先制点を許さないゲーム運びに関することなのか……。