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岩政大樹が岡山に持ち込んだ鹿島流。
勝利の秘訣は「まだ言いませんよ」。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/11/29 17:30
鹿島で幾多のタイトルを手にした岩政大樹が岡山にもたらしたものは限りなく多い。「勝利の経験」はその最たるものだろう。
矢島は豊川にすべてを託したつもりだった。
90+2分、岡山のMF矢島慎也が前を向いたとき、松本のディフェンスラインの後方にはスペースが、ディフェンスライン間には隙間が生じていた。
矢島が左足で柔らかいフィードを送ると、豊川がヘディングでボールをゴール前に落とす。そこに走り込んできたのが、赤嶺真吾だった。
矢島は豊川にすべてを託したつもりだった。
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「真吾さんの位置も見えていましたけど、トヨのほうが動き出していたというか、視野に入ってきたので。トヨが自分でいくかなと思っていました。真吾さんまで行く過程は自分の中にはなかったですね」
豊川は赤嶺のことを信じていた。
「見えていましたね。ああいう状況になっても真吾くんは見ていてくれるから、こっちはすごく動きやすい。それが点につながってよかったと思います」
岩政「ディテールをちりばめて試合をした」
赤嶺は豊川が投入されたときから、この瞬間を待ちわびていた。
「トヨが入ったときから、あのスペースを狙っていました。本当に良い落としが来ましたし、GKも出ていたので良かったです」
赤嶺が左足でGKの伸ばした左足のわずか先にボールを通すと、岡山を決勝へと導く勝ち越しゴールが決まった。
試合後の取材エリア。大半の選手が立ち去ったあとで姿を現した岩政は、噛みしめるようにして振り返った。
「今日はいろいろなディテールをちりばめて試合をした。その部分では少し上回ったかな、という気がします」