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「チームがいい時の歯車にはなれる」
原口元気が今目指すのは、その先。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/11/19 07:00
ドリブルを仕掛け、シュートを放ち、ロングパスに諦めず走り、誰よりも速く守備に戻る。原口元気のここ数試合のパフォーマンスは異次元だ。
チームが悪い時に、それを変えられる選手に。
10月30日、ヘルタ・ベルリンはけが人や出場停止の選手が複数いたことで、攻守にわたってチームの良さはほとんど出せないままホッフェンハイムに0-1で敗れた。試合後に原口はこう振り返っている。
「正直、リズムに乗れなかった。もちろん、チームとしてもリズムを作り出せなかったですけど、こういう試合でリズムを作るのが自分だと思うし。テンポを出して行くのが自分の役割なので」
代表だけではなく、ヘルタでも自分がチームを引っ張っていく覚悟がある。だからこそ、チームとしての攻撃が機能しないときに、状況を変えられる選手になりたいのか、と問うと、こんな答えが返ってきた。
「まだ、まだ、そういう部分は足りないですね。チームが良くて、その歯車にはなれていたかもしれないけど、チームが上手くいかないときに何かしなくちゃいけない、というところまで(自分のレベルも)来ていると思うし。そこが出来たら、もう1つ上にいけると思う。チームと一緒に低迷していったら意味ないので」
今シーズンのパフォーマンスは、代表でもクラブでも高く評価されている。にもかかわらず、そこに甘んじるどころか、高みを目指すために何が必要なのかに視線は向けられていた。
意図的に、一般的な日本人選手とは違う道を進む。
翌週の練習場で、再びそうした目標設定と現状について話を振ると、原口はこんな表現で話をしてくれた。
「ドイツにいたら別に珍しくないのかもしれないけど、俺は日本人ぽくない特長を持っているから、そこは伸ばしていくべきだと思う。やっぱり日本人選手というのは、細かいところで技術を活かしたりするのが上手いでしょう? ザックさんが代表監督だった時は特にそうだったし。だからそこで勝負をするよりも、違う部分の能力を伸ばしていったほうがいいのかな、とブンデスに来てから思ったので」
彼に与えられた“才能”を1つ挙げるとしたら、現状を見定め、目標を立て、努力できる力があるということだ。
では、彼はどのような目標をかかげ、そのためどんなことを考えながらプレーしているのか。そして、そこにむけて猛烈な努力をするモチベーションの源はどこにあるのか――。