F1ピットストップBACK NUMBER

ベッテルの“無線暴言”が大問題に。
不平より、セナのような魂の叫びを。

posted2016/11/06 07:00

 
ベッテルの“無線暴言”が大問題に。不平より、セナのような魂の叫びを。<Number Web> photograph by AFLO

メキシコGP、降格されたフェルスタッペンと入れ替わりで、久々の表彰台を喜んだベッテル(中)だったが、結局自身もその後に降格して5位に。

text by

尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

PROFILE

photograph by

AFLO

“Wooooooooo!!!!!!  Oooooooooo!!!!!!”

 1991年、8回目のチャレンジで、ようやく母国のブラジルGPを制したアイルトン・セナ。チェッカーフラッグ直後、国際映像から流れてきたのは、コックピット内で号泣しながら絶叫するセナの無線だった。

 残り20周で4速に問題が起き、その後3速が壊れ、最後は5速も使えなくなったセナ。2速から6速にギアを飛ばすのは危険だと考えたセナは、6速だけで何周も走り続け、悲願のブラジルGP優勝を成し遂げた。 

 レース後、6速だけで走り続けたというセナの話を何人かのドライバーが「そんな訳はない」と信じなかったが、レース終盤のオンボード映像にはセナがまったくシフトチェンジしていない事実が映し出されていた。それを知ったフェラーリが自社のテストコースで同じように走らせてみたが、うまく走らせることができなかったというエピソードは有名だ。

セナの魂の叫びから、無線はF1中継にとって不可欠に。

 奇跡の6速ホールド走行を可能にしたのは、セナの全身全霊の走りであり、あの無線はまさに魂の叫び声だったのである。

 その魂の叫びを世界に配信したのは、地元ブラジルの放送局だった。母国のヒーローであるセナの声を拾おうとマクラーレンの無線を傍受していたのだ。当時、マクラーレンは無線傍受を防止するために「スクランブル」をかけていたにもかかわらず傍受されたため、1992年からテクニカルパートナーとして契約する予定だったケンウッドの無線システムを半年前倒しして、この年の日本GPから使用することになったという話もよく知られている。

 現在はどのチームの無線も、通常は傍受できないシステムが導入されている。

 だが、セナの絶叫により無線の重要性を知った、テレビ放映の権利を握っていたバーニー・エクレストンが無線の放映化に乗りだし、いまではF1中継に無線はなくてはならない存在となった。

【次ページ】 「どけよ、いい加減にしろよ!」と“Fワード”連発。

1 2 3 NEXT
#セバスチャン・ベッテル
#フェラーリ
#アイルトン・セナ

F1の前後の記事

ページトップ