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ベッテルの“無線暴言”が大問題に。
不平より、セナのような魂の叫びを。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2016/11/06 07:00
メキシコGP、降格されたフェルスタッペンと入れ替わりで、久々の表彰台を喜んだベッテル(中)だったが、結局自身もその後に降格して5位に。
「どけよ、いい加減にしろよ!」と“Fワード”連発。
その無線が10月30日のメキシコGPで、話題を集めた。表彰台争いをしていたフェラーリのセバスチャン・ベッテルが暴言を連発したからである。ベッテルは残り3周でレッドブルのマックス・フェルスタッペンをオーバーテイクしようとした。いったん抜かれたかに見えたフェルスタッペンはベッテルと並走する形からこらえきれずにコースオフしたが、ショートカットしてコースに戻ると、再びベッテルの前に居座り続けたのである。その態度を理解できないベッテルは無線で、こうぶち切れた。
「どけよ、どけっていうんだよ!! F××× S×××(『いい加減にしろよ』という意味の放送禁止用語)。まったく、あいつは本当にF××× S×××。ねえ、みんなも見ただろ? あいつは(ベッテルのすぐ後ろに迫っていた、レッドブルのダニエル・)リカルドを僕に追いつかせようと邪魔しているんだよ。F××× S×××!!」
ベッテルとフェラーリ陣営は、フェルスタッペンが違法にコースをショートカットしたため、レース審議委員会からなんらかのペナルティがフェルスタッペンに与えられると期待していたが、結局そのままチェッカーフラッグが振られた。ベッテルの怒りはピークに達し、コメントはさらにヒートアップした。
「セバスチャン、不満があるのはわかるが……」
「チャーリーに言ってよ。F××× O××(『失せろ』という意味の放送禁止用語)だって。マジでF××× O××」
チャーリーとは、レースディレクターのチャーリー・ホワイティングのこと。F1界の競技委員長である。ほかのスポーツなら、一発で退場させられても不思議はないほどの暴言をベッテルは無線で吐いたのである。
ベッテルの無線はフェラーリのチーム全員が聞けるものの、レース中にドライバーに無線で語りかけることができるのは、混乱を避けるため、原則、担当レースエンジニアだけとなっている。しかし、ベッテルの暴言を聞いたフェラーリは、チーム代表が特別なボタンを押して割り込んできた。
「セバスチャン、落ち着きなさい。不満があるのはわかるが、落ち着くんだ。いまはまだ審議中だから。いまは抑えて。この件は、後で話そう」