プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ベンゲルがイングランド代表監督に!?
前任者のスキャンダル退任が好機に。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2016/10/08 08:00
アーセナルで1000試合以上の指揮をとるベンゲルは、まさにレジェンド。イングランド代表にとっては最高の適任者だが……。
フランス人とはいえ、ベンゲルは「準国産」扱い。
アラダイスが選ばれた今夏の時点でも、FAの第一希望がベンゲルであったことは広く知られている。契約満了がモットーのアーセナル指揮官には、当然ながら今季開幕前の7月に招聘など不可能だったわけだが、来年5月末まで暫定体制で凌ぐことができればクラブとの現契約が満了となる。
アラダイスの後任選びの中で、「成功を収める監督の平均年齢は恐らく60代。願わくばプレミア経験の持ち主で、イングランド人ならばボーナスのようなもの」というグレンCEOの言葉は、国産監督には固執せずに改めてベンゲル招聘に動くと言っているかのようだ。
66歳の知将の国籍がフランスではなくイングランドでありさえすれば、FAの意向には国民の大半が賛成しているに違いない。
だが、監督としてのベンゲルは「準国産」と言ってもよい。ワールドクラスと認識されるようになったのは、1996年にアーセナルの指揮官になってから。プレミア歴20年のフランス人は、イングランドのサッカー界に関する理解と知識でも並の国産監督には引けをとらない。無敗優勝を含む3度のリーグ優勝と6度のFAカップ優勝は、国産候補者の誰も肩を並べることのできない実績だ。
前回のプレミア優勝は'04年で、解説者のスタン・コリモアなどは「アーセナルでの過去12年間は10点満点中5点の出来」と厳しいが、そのコリモアも代表でのベンゲル就任の可能性を嫌ってはいない。
イングランドが欲する「新たなDNA」の完璧な適任者。
ボールを支配して足下で繋いで攻めるベンゲルの信心と情熱は、相変わらずプレミア随一。アーセナルの現在のパフォーマンスも、ベンゲルの哲学が見事に反映された内容で、苦手意識を認めてもいたチェルシーにも快勝(3-0)したばかりである。
そのスタイルは、イングランド復活に必要とされる「新たなDNA」と呼ぶスタイルそのもの。加えて育成熱心なベンゲルであれば、サウスゲートなりハウなりを代表チームスタッフの一員として抱えながら、ノウハウを伝授することも厭わないのではないだろうか。